私の時間は高校3年生の頃から止まっている。そのことをずっと隠して過ごしてきた。
自分の心の黒い面を隠してきたせいか、友人からは「すももはポジティブだからネガティブな気持ちになることはないんだろうなぁ」と言われることが多い。明るくヘラヘラした私の態度が友人の記憶に残るのだろう。「すももは明るい」「ポジティブだ」と友人以外にも多くの人に言われる。

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でも本当は違うのだ。本当の自分は過去のトラウマを忘れることができずに縛り付けられたままなのだ。
高校3年生だったときからもう5年も経とうとしている。私は過去のトラウマから解放されたい。そしてそのために藻掻いてみたいと思うようになった。

いくら明るい私でも気分が落ち込むこともある。しかし、そのようなときに限って高校3年生の頃のトラウマが頭をよぎる。
「私が弱かったからいけないのだ。あの頃と変わらず私は弱いままだ」
この言葉はまるで呪いのように、ことあるごとに私を縛り付ける。
高校3年生の時のトラウマ、それは信頼していた予備校教師からのセクハラだった。

高校生の私は能力的にもまだ未熟で、セクハラという言葉を聞いたことがあったものの内容までは把握してなかった。
「可愛くない私なんてセクハラされるはずがない!」と高を括っていたことも裏目に出てしまったのかもしれない。はたまた「大人は理性的である」と信じていたせいだろうか。
いずれにせよ私がセクハラを受けたせいで、私は過去のトラウマから脱却できていない。その事実は確かである。

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その予備校教師はとても優しかった。授業以外の時間でも質問に答えてくれたし、ラインでも色々相談にのってくれた。もしかしたらラインで相談にのるという行為も他の教師の方からしたら異常に見えるのかもしれないが、受験生の私にとってその教師の行動は目からウロコだった。なにせ受験のプロがいつでも勉強をサポートしてくれるのだから。それが私の支えでもあった。
けれどラインでのやり取りをしていくうちに違和感に気づいた。「これって受験に関係ない話だよね…」「こんなに長時間話してもいいの…?」と思うことはあったけれど、当時の私の息抜きになっていたため気にも留めなかった。
完全に異変に気づいたのはセクハラにあった時だった。

誰もいない部屋で後ろから抱きつかれた。胸を触られた。頬も。耳も。
気持ち悪すぎて思い出すだけで吐き気がする。
誰かに相談すればよかったのに、受験目前だった私はいうことができなかった。面倒事を引き起こしたくなかった。誰かに迷惑をかけたくなかった。
でも相談しなかったことが仇となり、私は精神をすり減らしてしまった。予備校教師が担当していた教科が受験本番で解けなくなった。問題を見るとあの悪夢を思い出すのだ。その結果、志望校に落ちた。同時に望みも消え去った。
「こうなってしまったのも自分のせい。セクハラにあったのも自分が弱いからだ」と思い続けて今に至る。

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この悔しさをどうしようか。
私の人生をズタズタにしたあいつをどうしてやろうか。
許すもんか。許さない。絶対に許さない。
最初はこう思っていたけれど、今はそう考えることにも疲れた。
とにかく私は解放されたい。そのために今ここに心の内を書いている。

乗り越えるためには真剣に自分自身と向き合わなければいけない。これはこのエッセイを通じて成し遂げることができるように思う。
私以外にも同じ思いをした人がいるかもしれない。今この瞬間に苦しんでいる人がいるかもしれない。
苦しんでいるのなら誰かに相談してほしい。あなたは悪くない。弱くはないのだから。
そして歩きだそう。明るい未来があると信じて。