大学を卒業し、社会人になって7年が過ぎた。
私はいつの間にか先輩教員になっていた。
ずっと新人だと思っていたが、周りを見たら年下ばかり。大学を卒業したての若い先生たちが何人もやってくる。7年前とは違う風景になっていた。
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私は今、学校で非常勤講師として週16時間の通常授業、2時間の学習支援指導、そして、後補充を担っている。
小学校で非常勤講師をしているため、通常授業といっても、毎年教科や学年が変わる。音楽だったり算数だったり国語だったり書写だったり……。今まで担当した学年は1年生から6年生のすべての学年で、教科も様々だった。
学習支援指導では、周りについていくことが難しい児童のサポートや、荒れていて学級活動が難しいクラス等で支援をする仕事をしていた。椅子に座っていることが難しかったり、ランドセルの中身を出して準備をすることが難しかったりで、集団活動を困難とする児童がたくさんいる。正直に言うと、自分が小学生の時よりも、集団活動を困難とする児童は増えている。担任の先生は本当に大変だと思う。
そして、後補充だ。
後補充とは、初任者研修等により、初任者が出張する日に担任業務を行うものだ。簡単に言えば、担任の代わりをする仕事のことだ。初めて教員として採用された先生が、研修で授業ができない時に、代わりに1日クラスで担任をするということだ。
私は正規職員として担任を任されたことはないが、後補充として担任を任されるのはもう4、5年目になる。
学校の仕事の中では、後補充が一番大変だった。普段は4限目までしか授業を行わないが、後補充の日は6限まで。朝の会はもちろん、給食や掃除の指導もしなければならず、1日中トイレにさえいけないこともある。4、5年やっても慣れない。
担任の大変さを毎回痛感させられる。
初任の先生たちはこの業務を毎日こなしていると思うと、尊敬しかない。
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私は非常勤講師という立場のため、普段は1日中、学校で働いているわけではない。でも、1年間だけ常勤講師の経験があるため、1日中、小学校で働く大変さはよくわかる。もうそれは、心が締め付けられるほど、わかる。
今は、7年前よりも、上司が全体を通して少し優しくなり、ハラスメントの対策も強化されているように感じられる。でも、学級運営は7年前以上に大変だ。現場をこの目で見ているのだから分かる。簡単に分かるなんていったらいけないかもしれないが、大変なのは間違いないと思う。
だから、初任の先生が、私が先輩だからと気を遣ってくる時に、申し訳なく感じる。私は、毎日学校で1日中働くことから逃げた人間だ。常勤で働いたのは1年だけ。偉いのは、毎日毎日学校で朝から晩まで働いている人たちだから。
私なんて偉くないから気を遣われる必要はない。
私が先輩だから、年上だからって、何も気を遣わないでほしいと思う。たった月に1、2回、それもたった1日担任の代わりをするだけ。何も偉くない。毎日朝早くから夜遅くまで学校で仕事している人の方が、私なんかよりもずっとずっと偉い。
先輩の私はちっとも偉いわけではない。もちろん、ベテランの先生は経験も豊富で偉い。でも私は違う。私は先輩だからと、敬ってもらう立場であるなんて思っていない。
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やってほしい授業やプリントがあったらできる限りやっておくよ。
引き継ぎのノート、無理にいっぱい埋めなくて大丈夫だよ。
気になることあったら遠慮なく聞いてもいいんだよ。
きつかったらきついって言っていいんだよ。
辞めたくなったら辞めたいって言っていいんだよ。
私は先輩だけど、何も偉くない。
だけど、先輩として、支えられるなら、支えてあげたい。
一生懸命働く初任の先生たちに、無理しないでって言ってあげたい。
私は偉くない先輩。だからこそ弱音吐いてもいいよって言ってあげたい。
教員になってよかったと生き生きと働けているなら、それでいい。
でも、もし、潰れそうになってしまったら、上司に言いづらかったら、私が聞いてあげたいと思う。私は偉くない先輩だから。