雑誌やテレビのインタビューなどで、「年齢は記号」や「またひとつ歳を重ねて30代になることを楽しみにしています」的な発言をしているモデルや女優をよく目にする。
私はずっと、夢を売る仕事だから強がりを言っているのか、またはそれは彼女たちが美しいから言えるのだと思っていた。
でも最近、実は反対なんじゃないかと思ってきた。若さや美しさだけが武器な人ほど、加齢を恐れている気がする。自分にそれ以上の魅力が備わっている人は、年を取るのがこわくないんじゃないか。

若い女ということを利用し、甘えられるところは全部甘えてきた

そう言っている私は、2022年4月で30の大台に乗る。
この一年はいつもの一年とは違う。20代から30代になる。この一歳の違いは女には大きい。
私は特段美人でもなく、 若い女だということを悪びれもなく利用し、甘えてきた人間だ。だから私は30歳になることが、物凄くこわい。

私は普段、テレビ局でニッチなデスク業務をしている。
25歳で転職したばかりの頃。今考えれば、「既婚者のアラサーが職場にそれ履いていく?」とつめたい視線を送られそうな、膝が出る白ニットのワンピースにピンヒールを履いて、女丸出しで出勤していた。

接客業からテレビ業界への転職は珍しいことも手伝って、優しく教えてくれたり助けてくれる男の人は多かった。
口うるさい上司や不機嫌なことが多いディレクターと接する際、「何か言いにくいことがあれば、俺が言うので伝えてください」と言ってくれる先輩。
デスクの配置換えで配線がわからなければ、「僕が代わりにやりますよ」と申し出てくれる後輩。
言いにくいことは全部言ってもらったし、甘えられるところは全部甘えてきた。
そういうことに関して今まで申し訳ないなんて思うことなく、寧ろ甘えられなかったり肩肘張って頼れない方が、女として可愛くないじゃんと思って生きてきた。
もちろん黙ってるだけで綺麗というタイプではないので、やってくれた相手に対しては好き嫌いに限らず、精一杯言葉を尽くして感謝を述べ、褒めちぎり、笑顔と愛嬌を振りまいてきた。

「女子力」は褒め言葉。でももう「女子」という年齢ではなない

私は若い女だからこそできる格好が優遇されることも大好きだ。
「女子力」という言葉は私にとって誉め言葉だし、「女子だねー!」と言われれば嬉しい。
でも最近、「女子」という言葉は避けるように気をつけている。
もう自分は「女子」とカテゴライズされるような年齢ではないのではないかと思い始めたからだ。

そうやって「女子」である時間も20代である時間も限られてきて、少しだけ考え方も変わってきた。
今のままで年齢を重ねていったら、私ってどんな大人の女になるんだろう。
私ってどんな大人の女になりたいんだろう。
欲しいブランド物やアクセサリーを男の人に買ってもらえる女は素敵だけれど、自分で稼いで自分で好きなように買える女ってめちゃくちゃいい女なんじゃないか?
お願いして仕事をやってもらえたり、困っている時に助けてもらえるような可愛げのある女でいたいけど、自分でなんでもできる上で、頼れもする女が最強なんじゃないか、とか。

20代より30代の方が幸せだったと心の底から思えるように

だからここでひとつ宣言したい。
2022年は「自分で一度トライしてみる」。

常にご機嫌斜めで苦手な相手だから、コミュニケーションを放棄し他人に頼るのではなく、まずは一回自分で愛想よく挨拶して声をかけてみる。
機械音痴だけど、一度自分で調べて分からなければ教えてもらう。

こんな些細な宣言では、30歳になるまでにとても間に合わないだろう。
年齢は記号とは思えないし、30歳になることは全然楽しみじゃない。年を取ることは依然こわいままだ。

でも振り返った時に、20代より30代の方が幸せだったと心の底から思えるように。女扱いされなくなったとしても、人として魅力的で、自分が納得できる大人のいい女になるために。
とりあえず、今年からちょっとずつ変わってみたい。