2023年4月2日、そう、この「わたしは先輩」のエッセイの締切日。
この日に、私は社会人になって初めて「後輩」が出来た。すごくまじめそうで、緊張しているのが伝わってくる彼女を見ていると、かつての私を思い出す。だって私もめっちゃ緊張したから。頑張ろうってめちゃくちゃ思っていたから。だからこそ、「こうしよう」と決意することも出てきたから、締め切りぎりぎりだけど、書くことにした。

◎          ◎

私が新卒で社会人をスタートしてから実に4年。大学生活なら留年しなければ卒業できてしまう年月が経っていた。4年前に私が最初に配属された場所は、なかなか新卒がやってこないと有名な場所で、当時は「5年ぶりにピカピカのひよっこがやってきた」そんな感じだった。お年寄りの方が日中通うデイサービス。がちがちに緊張しながら4月1日を迎えたことを覚えている。

初日から、とにかくいっぱいいっぱいだった。入浴介助、送迎(独居ゆえにおうちで介助が必要な方が何人もいた)、機能訓練などなど……はじめは誰でもそうだよなんて、どこかから声が聞こえてきそうだけれど、そんなこと当時の私の耳には入らなかった。私の前に働いていた正規職員の中心メンバーは、パートの職員さんも利用者さんにも、みんなから信頼され、職場の中心を担っていて、すごくきらきら輝いていた。その姿を見聞きしていたから、「わたしもあの人みたいにならなくちゃ」と思って、必死だった。

一緒に働くメンバーの方々は、ほとんどが5年以上いるベテランさんばかりで、ひたすら上だけを見つめて追いかけないといけない、這い上がらないといけないように感じていた。転倒したら骨折しちゃう、間違えたら迷惑かけちゃう、そんな緊張感をずっとそばに置いていた。

◎          ◎

結果、70人近くの利用者さんの身体状況、認知機能の状況、家の状態、様々なことを頭に入れながら、徹底的に個別に寄り添った支援(介護)をチームで担うのだが、そのチームの一員に、私はなりきれなかった。

なんとか首の皮一枚、つなぎとめられるものはあったのだが、働いていた3年間を通して、私は「求められていることをうまくやり切れていない」とずっと感じていた。
「どうして送迎を覚えきれずに業務を外される?デイサービスの正規職員なのに。フルタイムで働く介護職員なのに。」「みやびさんが出来ないから私達朝も夕方も車に乗らないといけないの?」その目線が痛くて痛くてたまらなかった。出来るようになることをあきらめたくないのに、できない自分が悔しくて悔しくてたまらなかった。

先輩の中には、私の話を聞いてひたすらに共感して、優しく励ましてくれる他部署の人もいたし、話しやすくて相談しやすい看護師さんもいた。だからこそ、頑張れたところもあった。それでも、常にいつも肩に力が入り、「普通じゃないんだろうな」とどこか諦念のようなものも感じていた。

◎          ◎

ずっと悩んでいた私は結局異動願いを提出し、まさかの通ってしまうというミラクルを起こし、いま、ショートステイでのびのびと仕事をしている。それはきっと、「ここにはミスしても怒る人いないから」の言葉に救われていたからだ。大事なポイントだけ押さえたらOKという雰囲気と初夜勤前の手紙にも助けられたし、だからこそ、「安心」して、「場の空気を味わって」リラックスして覚えることが出来た。

今日異動してきた彼女に、「先輩として」私が出来ることは、視野を広く持ちながら、彼女にプレッシャーじゃなくて安心をプレゼントすること。
初めての24時間365日開所の施設、夜勤。なれないことがたくさんだから、きっと普通に勤務するだけでいっぱいいっぱいになるだろう。だから、「大丈夫、大枠と少しの大切なことだけまず掴んだらいい」を伝え続ける。

そして、「ここにはミスしても怒る人いないから」を彼女にも伝える。
これは、私が気負いなく先輩として在るための、宣言。