私の友人はイケメンだ。生物学上は女性なのでメンズではないけれど、いうなればイケてる友人…イケ友とでも言うべきか。
もし私の恋人があの友人ならばきっと幸せだろうなと思う。性格も似ているし、ガサツなところとか優柔不断なところもそっくりである。唯一違うのはあの友人は根っからのポジティブ人間で、私は地獄の熱湯を煮詰めるレベルのネガティブ野郎という点ぐらいだろうか。恋人ならいいな、と思ったことは少しあるけれど私には心の底から好きな人がいるので今はそのように思わなくなった。
しかし、あの友人のイケてる部分を見るとやはり推せてしまう。一生推せる。本当に推せる。
ここでは私のイケてる友人のエピソードを紹介したい。これを読んでるあなたも一緒に推してみませんか……?(という謎の提案も同時にしてみることにする)

◎          ◎

ある日、イケてる友人とお互いに誕生日を祝うためにショッピングへ行った。普段ショッピングをすることはないが、友人が誕生日プレゼントを買いたいということでお互いあげるプレゼントを探していた。
しかし、何時間ウィンドウショッピングをしてもお互いに欲しい物が決まらなかった。決まらないところまでそっくりである。
「無理して買うこともないよね。欲しい物ができるまで待つのもいいよ」という友人の一言でその時は何も買わずに帰ろうということになった。だが、帰る前にいつも使っているDiorのリップが残り少ないことを思い出し、買いに行った。

……が、友人とお出かけしていたのがクリスマス当日だったせいかものすごい行列ができておりとても買える状況ではない。Diorで最後尾の看板が出るほど行列ができている。今までそんな場面に遭遇したことがなかったため、それはとても驚いた。
「ここでは買えない……」と判断した私はお気に入りのポールアンドジョーでリップを買おうと決心した。

◎          ◎

ポールアンドジョーでは意外とすんなり商品を見ることができ、友人は私がリップを選ぶ様子をまじまじと見ていた。
「なんだか、ガン見されるのは恥ずかしいなー」と心の中で思いながら買うリップを手に取った瞬間、「それ、買うの?」と友人が聞いてきた。
「うん、買うよー!かわいいでしょー?」と言ったのも束の間、友人が店員さんに「じゃあ、これ私が買うので会計お願いします」と言った。

「ええええええ!?ちょっと高いよ!?そのリップ……いいの?いいの……?」
友人の思いがけない行動に私の心の中は大パニックだった。
また、その後に友人が「これ、ラッピングとかできます?有料でもいいのでラッピングお願いします」と言った。

「えええええええ!?本人が目の前にいるのにラッピングしてもらうの!?有料でもいいの?いいの……?」
私の心の中は再度大パニックである。

◎          ◎

また、友人が「ラッピング、水色とピンクがあるって。どっちの色が好き?」と聞く。
「みずいろ……」と人見知りの子どもみたいに返事をすると、友人は店員さんと話を進めテキパキと会計を済ませた。

そして最後に「お誕生日おめでとう」と言って、リップが入ったポールアンドジョーの袋を私に手渡したのである。

欲しかったリップを買ってくれた上にラッピングまで……。そして最後に「誕生日おめでとう」の言葉……。かっこよすぎて一生推せる……(少なくとも私は……)。
この後もイケてる行動を繰り返す友人に心を奪われながら私はその日を過ごした。
本人になぜそんな行動をやすやすと取れるのか聞いてみると、何も意識してないと言う。
天然であるがゆえにできるのか…何度でも惚れることができる友人。それが私の推せる友人である。