お弁当に入っていたら嬉しいランキングNO.1は卵焼きだった。
母が作る卵焼きが世界で一番大好き。

学生の頃は毎日お弁当を持って登校していたので、お昼の時間になると卵焼きの味付けでよく話題になった。
私の家庭は、しょっぱい卵焼き派だった。マヨネーズにわかめふりかけ入りの卵焼き。これがたまらなく美味しかった。
幼い頃からこの味だった為なのか、買ったお弁当に入っている卵焼きやお寿司屋さんにあるギョクが苦手だった。

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母が一番最初に教えてくれた料理が卵焼きだった。小学校入りたてのおませさんな私はとても嬉しかったのを覚えている。
初めて卵を割った瞬間、材料が入ったボールを持って、卵を混ぜる音。いつもは布団の中で聞いてた音が今は目の前にある光景。
母が教えてくれたことを実践してみるのは難しくて、焦げた卵焼きの完成だった。見た目はイマイチだったけれど、初めて作った卵焼きはとても美味しかった。

その日から私は卵焼き係になった。卵が冷蔵庫にあれば何度も練習をした。
初めて作れるようになったことが嬉しくて、みんなに作った。祖母の家にみんなでお泊りをしたときは、卵を10個使って作ったこともあった。

どんどん年を重ねて、経験を詰んでいくと四角いフライパンではなくても丸いフライパンでも作れるようになり、ヘラがないとうまく返せなかったのが、菜箸でも綺麗に返せるようになった。自分なりにアレンジをして、マヨネーズ+ハムやマヨネーズ+カニカマの組み合わせも抜群だった。

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大人になった今、お付き合いしている彼に初めて卵焼きを作ったとき、驚かれた。彼は長年、甘い卵焼きを食べてきたそうだ。卵焼きは甘い派としょっぱい派で完全に分かれた瞬間だった。

そして、彼も私と同じでお弁当に卵焼きが入っていたら嬉しいタイプの人だった。好きな人の為なら、やるしかない!とすぐ動いた。料理は大体、目分量で作ってしまうけれど、この時はしっかり某サイトで「甘い卵焼きの作り方」を調べた。

初めて作る甘い卵焼き。これであってるのかと不安になりながらも完成したのは綺麗な黄色の卵焼きだった。いつも見ていた卵焼きとは違う見た目に、これまた心が躍った。

今まで、指で数えられるくらいしか食べたことがなかった甘い卵焼き。一口食べてみると、びっくりするほど美味しかった。何で今まで食べてこなかったのだろうと思う程、美味しかった。
それから、私は甘い卵焼きにハマった。彼からの大絶賛をもらい、お弁当には必ず入れるようにした。

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実家に帰ったときに一連の出来事を母に話した。父と母の味付け好みの違いによるプチエピソードを聞いた。幼い頃から当たり前のように食べていた味でも、父と母だけしか知らないエピソードがあって、今では当たり前になりつつあるんだなぁとその時思った。

将来、結婚して子供が生まれたら作り方を教えてあげたい料理は卵焼きだ。
その時は絶対、母との思い出の味と、彼との思い出の味。どちらとも教えてあげたい。