私は、中学時代に不登校になった。
宿題を忘れたら居残りでやる…これぐらいならまだ、他の学校でもあるだろう。

「ノート片面1ページを毎日1ページずつ、自習して埋める」という伝統の宿題。日付を書き忘れたら駄目、書き間違えても駄目で、先取りも許されなかった。文字を大きくしたり、図を描くのも駄目。しかも、その判断基準は先生によってバラバラだった。

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習い事のダンスにほぼ毎日の吹部、ほぼ別居の父、そんな父に悩む母と、発達障がいを持つ兄の手伝い。

宿題に数時間かかることもあったし、徹夜、寝落ち、朝起きてからやることも日常茶飯事。
学力社会に疑問を持っていて勉強は一切してこなかった為「勉強のやり方」が分からず、器用でもない私にとって宿題は難しいものだった。

それでも、「頑張ったけど途中までしか出来ませんでした」と言って提出したら、「貴方より忙しくてもやってる人はたくさん居る。やらない貴方が悪い」と言われた。自分の努力…いや全てを否定されて、暴言を吐く父と同じだと感じた。いつしか「宿題が出来てない→また否定される→行きたくない」と思うようになった。

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明日は行く、と思っても朝には体調が悪くなる。
親は行けと言うし、親友には心配かけたくなかった。
スクールカウンセラーに相談したら、「先生が嫌?それは駄目だよ行かなきゃ」などと笑われた。

私の居場所は、SNSだけだった。そこでは顔が見えないからこそ本音をさらけ出せる…そこで知り合ったある人に相談にのってもらうのが、私の唯一の救いだった。

ある時、その人に「殺したいぐらい担任を憎んでいる」と言ったら、「たかが○んでほしいような先生に学校生活を数年とはいえ投げ捨ててもいいの?」と返された。

たかが、なんて言えるのがかっこいいし、何より、私のことをこんなに考えてくれる人が居るんだ…と、気付かないうちに好きになっていた。

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最初に告白した時は保留。それから半年が経った3年生の夏休みに「高校が決まったら答えを聞かせてほしいです」とお願いして、高校進学を決めた。頑張って登校を続けたら周りの反応も変わって、新しい担任の先生にはちゃんと認めてもらえた。

答えを知りたい…その一心だったけど、私なりに頑張って、行きたいと思った飛鳥未来高校に進学が決まった日、改めて気持ちを伝えた。

気持ちは届かなかったけど、それでいい。だって、あなたが居なかったら今の私も居ないもの。
たくさん泣いたけど、あなたみたいな人に出会えた私は幸せ者だし、それだけで十分だから。

最初は高校すら考えていなかった私が今の選択に後悔が無いのも、遅刻欠席が無くなったのも、成績優秀賞と行事特別賞に選ばれたのも、新しい夢が出来たのも…私1人じゃ頑張れなかった。全部、あなたが居てくれたからだよ。好きになって良かった。

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顔も本名も知らない。今分かっていることさえ嘘かもしれない。そんな人を好きになるなんて、私が1番信じられなかった。
でも、好きな人を自分が信じなくてどうするの?

あの時救われたのも事実。やきもちやいたのも事実。どんなこともあなたに1番に伝えたいと思ったし、自分のことを少しずつ教えてくれるようになって、嬉しかった。

私はあなたのことのことが好き。それを否定する理由はないと思ったし、あなたが私の話を信じてくれたように、私も信じるって決めたの。自分の気持ちを決めるのは自分しか居ないから。

あなたがもしこれを読んだら、どういう反応をするかな。きっと、「自分はそんな人間じゃありませんよ。自分は何もしていません、あなたが頑張ったからですよ。」ってまた言うんだろうな。

でもね。

たとえ嘘をついていても、好みじゃなくても…あなたがどんな人であっても、私を救ってくれた事実は変わらない。だから、何度でも伝えます。ありがとう。

名前はなんていうの?どんなところに住んでるの?好きな食べ物は?
あなたを知りたい、ありがとうって直接伝えたい…
でも、好きな人が嫌がることはしたくない。
だから、せめて今まで通り話していたい、あの人みたいに誰かを救える先生になりたい…と思いながら、入学式に向かう。

私は、名前も知らないあの人に助けてもらった。あの人が、暗く閉ざされた鳥籠の中から、助け出してくれたんだ。

そこから抜け出したい、変わりたいとあなたが少しでも思うなら…今度は私が助ける番。