バイト先にて。
先輩「tomoちゃんって何学部やっけ?」
私「薬学部です」
先輩「じゃあ将来は薬剤師になるん?」
私「そうですねー」
先輩「薬局におる薬剤師ってさ、何してるん?」
私「処方箋を確認して間違えないように薬を集めて患者さんに渡す、みたいな感じです。」
先輩「へ〜、それ6年も勉強しないとできひんのかな。なんか私にもできそうやわ笑」
私「あー…」
先輩「あ、怒ってもいいで!私あんま薬剤師のこと知らんねん」
私「いや!全然大丈夫ですよ!私も何で6年も通わなあかんのかなって思いますし!」

◎          ◎

悔しかった。
先輩に「私にもできそう」と薬剤師を軽く見られたこともだが、そんな先輩に薬剤師の仕事について正しく説明出来なかった自分自身が不甲斐なく思えた。
何で6年も通わなあかんのか。薬は一歩間違えたら生死に関わるもので、知識のある者が慎重に扱うべきだから。分かっているのに伝えられなかったのが、悔しかった。

薬学部に通っていると言うと、「賢いね」「将来安泰やね」と言われることも多い。「親が医療系なの?」とも。確かに薬剤師は何百、何千とある薬の名前や効果だけでなく、副作用や飲み合わせなどを覚えて、患者の症状や生活リズムを考慮しながら処方が適切か確認する必要があるので、勉強することは多い。確かに免許が取れたら就職はしやすい。確かに周りには親が薬剤師だったり医療系だったりする人が多い。間違ったことは言われていないのに、何故かもやっとしてしまう。学部を通して私を評価されている気がするのだろうか。

◎          ◎

私は幼い頃、よく体調を崩していた。大病をしたとか、入院したとかの経験はないが、細々と体調が悪かった。自宅用の吸入器で服薬してから幼稚園に行ったり、点滴をする為に病院に通ったり。今は体が強くなって体調を崩すことがかなり減ったけれど、あの頃は薬を飲むことが日常だった。
病院によく通っていたなら、医者か看護師に憧れることの方が自然だと思うかもしれない。でも、私には薬剤師のほうが魅力的に見えた。医者や看護師には病院でしか会えないけれど、薬剤師は薬を通して家でも守ってくれている感覚がして、より身近に感じていたからだ。
体調を崩して幼稚園や学校を休むことになっても、薬を飲めば元気になれる。私にとって薬は、魔法のようで、希望であった。そしていつの間にか薬剤師に憧れていた。

私は今、誇りをもって薬の勉強をしている。幼い頃に見た、彼らに近づくために大学に入学した。そのはずだったが、今はやりたいことが何なのか分からなくなり始めている。薬局薬剤師になるものだとばかり思っていたが、ドラマで観た病院薬剤師の姿もかっこよく見えた。中学生くらいから副作用に興味があったことを思い出し、副作用が少ない薬を開発してみたいという思いも芽生えた。何になるべきなのか、今すぐに答えを出すのは難しいだろう。卒業までに色んな挑戦をして、自分なりの道を決めていきたい。

次に「薬剤師ってどんな仕事?」と聞かれたら「魔法と希望を与えるんやで」とドヤ顔で言ってみようか。