幼い頃から母に連れられて図書館に通っていた。その始まりが何歳かは記憶にない。だからこそ、物心ついたときには図書館が身近な存在になっていた。
子どもの頃は3箇所の図書館に足を運んでいた。一口に図書館と言っても、広さ・明るさ・蔵書・匂い等々どれをとっても同じところはない。その中で1番好きだったのは街で1番大きくて古い図書館だった。
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そこは児童図書と一般図書の部屋が完全に分けられているというちょっと珍しいところで、木の床が軽くきしむエントランスを少し歩き児童図書室の前で母と別れるのが常だった。他に子どもがいることはあまりなく、私は静かな空間をふわふわと漂っていた。
そんな子ども時代を過ごしつつも、将来の夢がすぐに「本」と交わるわけではなかった。小学生の頃はパン屋さんになりたかったのである。理由は「パンが好きだから」。これぞ単純明快。まっすぐでよろしい!しかし食べるのが好きという理由だけでなれるものでもなく、結局パン屋さんめぐりをするくらいが私にはちょうど良いという結論に至る。そうして中学生の頃、次に思い描いたのは図書館司書だった。昔から身近な存在である、カウンターで手続きする人になりたかったのである。
図書館司書には資格が必要なことを知り、それを取れる大学を志望した時期も一瞬だけあった。しかし結局、資格とは無関係の総合大学へ進学。図書館司書が狭き門なことを知って怖気づいたのと、そもそもカウンターにいる人は図書館司書でないことが多いという事実を知ってしまったのである。その後も本とは全く関係のない会社に就職。図書館に関しても足を運ぶくらいがちょうど良い……という、パン屋さんと同じ結末を迎えたはずだった。
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しかし今、電子図書館ではあるものの2冊の共著が所蔵されている。一般社団法人北海道デジタル出版推進協会が主催する「北海道デジタル絵本コンテスト」で2年連続受賞させていただき、『不思議なスープ屋さん ~猫おじさんと港のクリスマス~』と『エゾリスくんのゆうびんはいたつ ~虹色のまほう~』が賞の一環として道内の電子図書館に寄贈されたのだ。同協会の公式HPでも読める(PDF)のでよければぜひ……ゴホンゴホン。
図書館の中の人にはなれなかったが、まさかの執筆者という立場で関わることができた。これは毎週のように足を運んでいた幼少期の私には全く想像でいなかったことである。
これだけでもありがたいことなのだが、人というのはどんどん強欲になっていくもの。受賞以外の経路で自分の書いた本が図書館に並ぶ日を夢想してしまうのだった。つまりそれは作家になるという夢。実は昔から憧れていて、でも私には絶対無理だと最初から諦めていた職業だった。
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しかし現在ライティングの仕事を始め、無理だと思っていた「文章で収入を得る」ということが少しずつできつつある。それなら”作家”と名乗れるようになる可能性も0%ではないかもしれない。まだまだ駆け出しもいいところだが、諦めないことって結構大事だ。某バスケ部の顧問も仰っていたことだし……。
自然と近くにあったもの、ぼんやり憧れていたこと。それが巡り巡って今私がやっていることに繋がっている。不思議であり、しかし実はそういうものなのかもしれないと思いながら、今日も目標に向かって文章を綴っている。