3月25日、私の夢が1つ叶った。
私の目の前にある「I am what I am」と書かれた、ピンクと紫のグラデーションカラーが施された1冊のZINE。
紙袋に包んで丁寧に持ち帰れたおかげで傷もついてないし、折れ曲がってもない。
あぁ、本当によかった。
これは3月25日のかがみよかがみのリアルイベントにて発刊されたZINEである。
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このサイトにエッセイを投稿し始めて、いつの間にか2年以上が経過した。
最初に自分の書いたエッセイが掲載された時には、そのサイトに自分の名前を何回も探すくらい嬉しくて、自分の書いた言葉や苦しい過去が受け入れられた気がして、高揚感でいっぱいだった。
その時の嬉しさをもう一度経験したくて、あの時の苦しみも言葉にして昇華したくて。
そこから投稿を続けて10作ほどがサイトに掲載された頃、ぼんやりとだけど私の中に1つ夢ができた。
「いつか、いつか。私の書く言葉たちが1ページでもいいから本として形になればいいな」
私は金融業界で働く平凡な会社員だし、自分の書いた文章が本になるなんて夢のまた夢だ。そんなことは私だって分かってる。ただ、ぼんやり夢を抱きながら書き続けるのは自由だよね。
と思いながら、その時の夢はそっと胸の奥に大切にしまった。
毎日職場と自宅の往復がほとんどの毎日。仕事から帰宅して慌ただしく夕食をとり、入浴して一通りの家事を済ませた後は、仕事上で必要な業界や試験の勉強をする。
勉強に疲れた時や、「気持ちを言葉にしたい」と感じた時には中古で購入したノートパソコンを開いて、今日感じた仕事でのモヤモヤや学生時代の理不尽な経験、「そういえばあの時の私、すごく頑張ってたよね」と、自分で自分を褒めて肯定するような文章。その時に私が感じている気持ちを言葉にして、少しずつ書き連ねていく。
パソコンに向き合う前はあんなにモヤモヤと胸が苦しかったはずなのに、カタカタとキーボードを打ちながら言葉にして吐き出すことで少しずつ心も軽くなっていく。
時々おやつにアーモンドを食べながら、淹れたブラックコーヒーを飲んで一息つくと、気分はまるでエッセイスト。そんな仕事以外で好きなことに集中している自分を俯瞰で見るとちょっと笑えて、気持ちを言葉にする作業に、私は数えきれないくらい助けられてここまできた。
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苦しい気持ちを昇華し続けたエッセイもいつの間にか50本を超えていた。
心の奥にあの時の夢はしまったまま。そんな時に、リアルイベントの開催と自分のこれまでのエッセイをZINEにして発刊してくださるというお知らせがあった。
「え!!!」と本当に声が出た。
たくさん悩んだけど、すぐに申込をしてイベントにも出席した。
数時間だったはずなのに濃縮されたとても充実して楽しかった時間に、ふわふわとした高揚感で新聞社を出た。羽田空港へ向かう電車の中でいただいたZINEを折り目がつかないように丁寧に開く。
自分のエッセイを探すと私の名前は、8ページ目にあった。
サイト上で見ていた文字が、今触れることができる紙の上に載っている。
これまで投稿した50作以上の中から、「これからも自分が自分の足で立って歩いていけるように」と、気持ちを込めて投稿したエッセイを選んでZINEの中に載せていただいた。
自分の名前とタイトルを優しく指でなぞる。
サイトを開いて見ていた時もやっぱり嬉しかったし、いつもほやほやとした高揚感に包まれていた。だけど、自分の紡いだ言葉が形になっているのを目の当たりにすると、本当に胸がじんわりと温かくなって、「わぁ」と小さな声が漏れる。
夢が叶うって本当に嬉しいと思った。
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飛行機に乗り、大切に自宅に持ち帰ったZINEは、じっくり時間をかけて大切に読んでいる。
一緒にZINEに掲載されているかがみすとさん達のエッセイも、「これを私はZINEに載せたい」という気持ちが、言葉に乗って一緒に伝わってくる気がして、本当に大切に読みたいのだ。お気に入りのティーカップにはちみつ紅茶を淹れ、それをゆっくり飲みながら大切に私はページを捲って読み進める。なんだか最後まで読み終えるのがもったいない気持ちと、早く読み進めたい気持ちがせめぎ合っているこの感じも楽しみながらあと少し読み進めていこうと思う。
子供の頃からたくさんの夢を見ながら大人になって来た。
大きくなったら保育士になりたい。
好きな洋服を着ておでかけしたい。
この分野を学びたいから県外にある大学に行きたい。
子供の頃の私の夢は残念ながらほとんど叶っていないけれど、大人になった私なら大きな夢から小さな夢まで、叶えたい気持ちがあればきっと叶えることができるはずだと信じている。
平凡な毎日かもしれない。だけど、この人生の主役は私なのだから叶えたい夢はどんどん実現させていこうよ、私。
まだまだ、大人の私には大小様々な夢がたくさんある。年を重ねながら1つずつ叶えていけるよう、自分の気持ちに正直に後悔の無いようにまっすぐに生きていこうと思う。