休日にメイクすることを我慢できなくて、肌を休めたいのに、ついメイクをしてしまう。
社会人になって6年目。私は会社員なので、平日はメイクをして通勤している。
日常的にメイクをする方のなかには、休日、意図的にノーメイクで過ごす方もあろうかと思う。私は肌が敏感なので、少し肌を休める日を作ったほうがいいなと思いながら、ついつい予定がない日もメイクをしてしまう。
なぜなら、メイクがたのしいから。ノーメイクの自分も嫌いじゃないが、メイクをした自分がより好きだから、である。

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3年前までの私は、むしろ渋々とメイクをしていた。「メイクなんて面倒くさい、やりたくない」という気持ちを我慢していた。
これまである程度見た目に気を遣ってはいたつもりだが、コスメにはまったく興味が持てなかった。学生の頃は接客のアルバイトをするときに色付きリップとパウダーをはたくくらいで、メイクなんてずっとずっとしてこなかった。
しかし、就職活動そして新社会人生活を迎える時期に「ついに避けて通ることができなくなった」と当時の私は思い、コスメを買うようになり始まったのが「渋々メイク期」だった。

簡単なベースメイク、リップ、最低限のアイメイク。ものの5分程度で終わる。
日常生活でかける労力と時間が一番低い工程だったが、それだけでも「社会人になったらしなくちゃいけない」「女性にとっては最低限の身だしなみ」だと思って渋々とメイクをしていた。いつ買ったかもわからないコスメをずっと使っている、なんてざらだった。今思い返すと、衛生面が少しこわい。

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さらにいえば、「なぜ女性であるだけでこんな面倒くさいことを強いられるのか」と思っていた。もちろん、周囲から好印象を持たれるための身だしなみは大切だし、自分をよく見せるための努力をする人は素敵だ。だがそれを女性のみ「マナー」といわれるのは納得がいかない。

ネクタイを強いられる男性には男性の苦労があろうが、だからといって「みんな一緒に我慢しましょう」なんておかしいのではないか。
「私は社会にメイクを強いられている」くらいに思っていたかもしれない。

そんな私に革命を起こしたのは、社会人生活のストレスでできたニキビだった。
ニキビができては治り、またできる、のサイクルが絶えず、一時期ニキビ跡の赤みがひどかったのだ。とくに、頬。顔の目立つところにそれらはあるので、人と話すとき、いつもそれとなく気になって触ってしまったり、髪で顔を隠すようになったりしていた。

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会社のトイレで居合わせた同僚と雑談していたとき、ふと鏡に映った自分を見て、あれ?と、思った。

人と話すときの私、暗くなってないか?
顔を見られるのが恥ずかしくて、堂々と顔をあげられなくなってないか?

それに気づき、「このニキビ跡を治して、堂々と顔をあげてやる!」と決意した。

自分のニキビ跡がどんな種類か、それに効く成分はなにかをとことん調べ、洗顔からスキンケアはすべて見直した。
そうしてケアに力を入れていると、「今の肌もきれいに見せたい」という気持ちが芽生えた。

未来の自分の肌はこれからきれいになるが、今の肌だって愛したい。自分がいいと思うものにしたい。
そこで、ベースメイクについても、色々と調べて試すようになったのだ。

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「パウダーファンデがニキビ肌への負担が少ないのか」「パウダーだと夕方には乾燥するな」「保湿力の高い下地を合わせるといいのか」「でもあまりニキビ跡の赤みがカバーされない」「グリーンやイエローのコントロールカラーを使うと赤みが抑えられるらしい!」

あれこれ試していると、いつのまにかメイク自体がたのしくなってきた。
ベースメイクに満足してきたら、ポイントメイクも気になってきた。自分の好きな色を使ってみる。似合う色もわかってきた。季節に合わせてコスメを変えてみる。うん、たのしい。
メイクがたのしいと思うなんて、一生ありえないと思っていた。

あれこれの努力が報われてか、私の肌はすべすべ陶器肌!とまでは言えないが、以前に比べればずいぶんきれいになった。とっても、好きな肌である。
そのままも好きだけど、お気に入りのコスメでめかしこんだ自分も、より好きのだ。

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今と昔の私、何が違うかといえば、「自分のためにメイクしている」この一点だ。
渋々メイク期の私にも、自分のためにメイクをしない選択肢があった。「しない」ことだって自己表現の一つ。「社会に強いられている」と思いながら「女性はメイクしないといけない」という固定概念から抜け出せなかった私は、強制されて(と思って)やっていたのだからそりゃたのしくなかっただろう。
しかしメイクのたのしさに出会った私は、自分のためにメイクをしている。

また、メイクをする理由も、人によってさまざまだろう。誰かのために自分をきれいにする人もいる。意識が外に向いていて、自分を変えられる素敵な選択をしていると思う。
ただ私の場合は、より心地よいと思う自分であるために、メイクをしている。それで周囲からもよい反応をもらえたら、それはそれでうれしい。だから、たのしいのだ。

とはいえずっとメイクしていると、肌負担を感じる今日この頃だ。ニキビができやすい私なので休みの日はノーメイクで過ごしたいが、ついついコスメを手に取ってしまう。
メイクのたのしみを、我慢できなくて。