「区切りにするから、別れてください」
その言葉とLINEのブロックで、私は大好きだった彼を失った。

そこからは地獄の日々だった。
眠れず、少し眠れたかと思えば、起きてから別れてしまった絶望感に苛まれ、彼がいない1日が始まることすら苦しくて仕方なかった。
依存していたのだと思う。彼は私の「日常」になっていた。彼がいない毎日を生きていく自信がなかった。このまま消えてしまいたいと何度も思った。
それでも死ぬ勇気がない私は、「寝たまま目が覚めなければいいのに」と考えるのが精一杯だった。

好きなご飯も食べられず、気分を紛らわせようとアイドルの動画や好きなドラマをつけても、集中力はまるでなく何も見続けられなかった。

ありとあらゆる失恋ソングを聴き漁り、毎日泣きながら通勤した。私と彼を誰かが見ていたのかと錯覚するほど、歌詞が当てはまるものばかりだった。気づくと職場でも涙があふれ、マスクの替えがなければ会社にも行けなかった。

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別れる前に部署を異動していたので、職場恋愛だった彼と顔を合わす機会はなかったが、仕事をしても彼の存在が消えることはなく、とても辛かった。

メールでやりとりをしていた時期もあったが、元に戻ることはない前提で、別れの理由など私の疑問に答えてくれるだけだった。

彼にすがり、ストーカーまがいなこともしてしまったし、占いにもたくさんお金を使った。恋愛成就で有名な神社にも通ったし、男性心理から復縁アドバイスをしてくれる方に電話相談もした。だけど彼との関係を戻すことはできなかった。

同時に自分が自分でなくなっていく、知らない顔を知っていくような怖さもあった。愛がいつしか、「あんなに愛してくれたのにどうして?」と疑問になり、彼への執着に変わっていってしまったのだと思う。

そもそも恋愛体質ではなく、恋愛の優先順位は低かった。「初恋」だったのかもしれない。そして25歳にして初めて「失恋」を知った。今まで、失恋した友達の話をどこか他人事のように聞き、ありきたりな言葉で励ましてあげることしかできていなかった。

失恋ソングは、歌詞に共感するのではなく、メロディが気に入れば聞いていた。
こんなに人を好きになることがあるのか、未練を持ち続ける気持ちが私には分からなかった。

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この年齢になるまで、好きな人がいなかったわけではない。
決して多くない元彼たちも記憶にはちゃんと残っている。

だけど、ここまで人を愛したことがなかった。この人となら、人生をともにしたい。
初めて結婚したいとまで思えた相手だった。
出会ったときから、彼は今までの人と何かが違った。ありきたりだけど、そんな感じがした。一目惚れのような、違うような。でも初めて会ったときにこの人のこと絶対好きになると思った。

そんな相手を失うなんて思ってなかったし、彼もとても愛していてくれた自信はあった。
だから、まだどこかで私のことを好きなんじゃないかっていう淡い期待を捨てきれなかったのかもしれない。
運命だと感じていた分、失った絶望感や喪失感は言葉では表せないものだった。
別れたということは運命の人ではなかったという事実が苦しかった。

ネットで「失恋からの立ち直り方」を調べると、「友達や趣味の時間で忙しくする」「新しい恋をする」「時間が解決する」という言葉がたくさん出てくる。
仲のいい友達たちも、私を元気づけようとたくさんの時間を一緒に過ごしてくれたし、「別れて正解だったよ」「もっといい人に出会えるってことだよ」「縁があればまた繋がる、繋がらないならそこまで」と言葉をかけ、寄り添ってくれた。
彼に不満や嫌だったこともあったはずで、納得できることも多かった。
けれど、楽しくて幸せな時ばかりを思い出し、納得しているのに、心のどこかでは納得できていないような日々が続いていた。

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ある日、そんな私の目にとまった言葉がある。
――運命の人は2人いる。1人目は愛すること・別れを教えてくれる人。2人目は永遠の愛を教えてくれる人――
読んだ瞬間、今までどんな言葉でも消せなかった苦しみから、少し解放された気がした。
初めてすーっと心の奥まで届く不思議な感覚だった。

別れてしまったから、運命の人じゃなかったって思わなくてもいいのかもしれない、彼と出会わなかったら、私は心から人を愛することを一生知らなかったかもしれない、大好きな彼と別れなければ、大切な人を失う辛さ、人に優しくする気持ち、自分自身と向き合うことを知らずに生きていたに違いない。そう思うことができた。

じゃあ今、もう完全に彼のことを吹っ切れたのかというとそれは違う。彼のことを全く考えない日はないし、思い出も鮮明に覚えている。会えることなら、今すぐにでも会いたい。

だけど、少なくとも彼への執着は消えていっている。彼がいなくても、自分の時間を幸せに楽しく過ごせるようになってきた。彼と出会う前だって幸せだった、その頃の気持ちがゆっくりだけど戻ってきている。

彼のこと、彼への気持ちはしばらく忘れられない。彼以上に愛せる人、愛してくれる人に出会える自信もない。だけど、やっと綺麗な思い出としてしまっていけるような気がしている。運命の人は2人いる、大好きで大切な彼はきっと1人目だった。

いつか今の私に、2人目の運命の人に出会えたよ。
1人目の彼がいてくれたからだね。と笑顔で言える自分がいてくれることを、涙を拭いながら願う。