人から貰ったプレゼントというものは、文句を言わずにありがたく受け取るべきだ。
分かってはいるけれど、どうしても耐えられずに、貰ったプレゼントに文句をつけてしまったことが一度だけある。

◎          ◎

プレゼントをくれたのは彼氏。付き合って初めて迎えたクリスマスが事の発端だった。
私は事前に、どんなものが欲しいかを彼に聞いており、要望に応えて前もって準備をしていた。一方で、私は彼からは欲しいものや、プレゼントについては何も聞かれず、気がつけばクリスマス当日になっていた。

だが、当日待ち合わせ場所にプレゼントを持ってきた私とは反対に、彼は手ぶらでやってきた。彼曰く「プレゼントは一緒に選ぼう」とのことだった。

クリスマスプレゼントを一緒に選ぶという考えがなかった私は、その言葉に何も返せなかった。欲しいものなんて急に言われてもその場で思い浮かぶわけもなく、結局その場では保留になり、年明けにプレゼントを貰うことに。

プレゼント自体は嬉しかったが、正直なところ、なんだか手を抜かれているようで、とてつもなく寂しかった。
元カレはちゃんとくれたのに…と頭の片隅に思い浮かべてしまう自分も嫌で、イベントに舞い上がっていたのは私だけだったのだろうか、もしかしたら彼のプレゼントも一緒に選びたかったのだろうか…。そんなことばかり考えて落ち込んだが、とりあえず、その時の気持ちはグッと堪えて彼には言わずにいた。

◎          ◎

それから2ヶ月後、バレンタインがやってくる。それからまた1ヶ月後にやってくるのは、ホワイトデー。
もちろん、バレンタインにはチョコをあげた。決してホワイトデーが欲しいためにあげたわけではないが、恋人関係なら、そういうものの授受に期待するのは、別に悪くないと思う。

周りのみんなからは、彼氏からあれを貰ったとかの話が聞こえてくるが、彼は私が尋ねるまで動かなかった。
「ホワイトデー、覚えてる?」
「覚えてるよ。今週末一緒に買いに行こうか」
私の問いに、聞き覚えのあるセリフで返した彼に、思わずうんざりしてしまった。
「君が選んだのならなんでも嬉しいよ」そう吐き捨ててその場での話は終えたが、なんだか迷ってそうだったので、こういうものが欲しいというヒントだけは与えた。
後日、そのプレゼントを持ってきた彼氏だったが、ネットで頼んだままの、ラッピングもなにもされていない個装の箱を渡してきた。

◎          ◎

それを受け取った時、さすがに痺れを切らしてしまった。
「プレゼントって、こういうものじゃなくない?」
貰った箱を見つめていると、気がつけば涙が溢れていた。
私が泣いている理由も、怒っている理由もわからない彼は、目の前でたじろいでいたが、そのまま我慢するのも良くないと考え、今まで堪えていたことをその場で伝えた。

私はプレゼントを一緒に選びたくないタイプの人間だ。
私にとってプレゼントは、あげる相手のことを思って選ぶものという認識がある。
値段じゃない。好みじゃなかったら…とかの問題じゃない。好きな人が自分のためを思って選んだものなら、なんでも嬉しいんだ。要は気持ちなんだ。
だからこそ、一緒に選ぶなんて手抜きみたいで寂しかった。

◎          ◎

とてつもない自己中で、ワガママを言っているのは自覚しているし、貰ったプレゼントを握りしめながら「せっかく買ってくれたのにごめん」と伝えたが、心のわだかまりは簡単には消えない。

彼は今までの彼女に対してもそうだったのかは知らないし、その元カノらに何と言われてきたのかも知らないが、これが私の”プレゼント”に対する価値観であることは知っていてほしかった。

自分の当たり前が、相手の当たり前ではないのだと、この一件で気づかされた。
価値観や、思考の違いって難しい。
ただ、こういう恋人関係において、その思考の違いをグッと堪えてそのままにしておくのは良くないと思う。思いっきり気持ちをぶつけてしまうのも一つの手段だし、これでお互いが変わるか変わらないかで今後の関係性も変わってくるだろう。
プレゼントのことは渋い思い出で、貰った物を見るたびに思い出すが、これからへの進歩だと受け止めたい。