一目惚れから始まる恋。
今でも忘れられない恋がある。

◎          ◎

それは社会人になって間もないころだった。
まだまだピュアだった当時の私は、一目で好きになった。

細身ながらも筋肉がある体に、美しい鼻、大人っぽい色気をまといシンプルなコーデがやけに上品に見えた。
そんな彼はホストだった。

マッチングアプリで出会い、第一通目で「ホストしてます、いやだったら返事しなくて大丈夫です」と送ってきた。
私は迷った。
思い込みが激しかったから、これを真に受けてはいけないものなのかもということはすぐにわかった。

社会的にみてホストがどんなイメージなのかとか、周りに人にいったらなんていわれるだろうとか、そんな一般的なことは一通り知っているつもりだった。
でも当時の私は、周りや世間に合わせて生きる他人軸から、自分で考えて決断する自分軸を確立したあとだったから、「ホスト」という単語だけで何かを判断することはできなかった。
だって、会ったことないもの。
漫画の世界やなんとなくのネガティブイメージはあったけれど、実際に見たことがあるわけじゃない。

所詮、得体のしれないなにものかに操作され形成された「思い込み」だった。
それにいわゆる営業目的でやっているホストのそれとは違う雰囲気を文章から感じて、一度会おうと決断した。

◎          ◎

これがわたしの一目惚れの始まり。
ほんのほんの一瞬ででもまぶしいくらいきゅんきゅんする恋の幕開けだった。

その彼とはカフェで何気ない会話をしながらも、初対面からとても深い話ができた。
さすが、ホスト。
しかも、彼はお酒が飲めないのにNO.1をキープし続けた結果、オーナーになった人だった。
一流の仕事人として、勉強になることもかなりたくさんあった。
そんな彼のことを一度会って好きになってしまった。
そして彼も驚くほどの思い込みの持ち主で、私に好意をもってくれた。

交際をはじめるのに時間はかからなかった。
そして交際をおえるのもまもなく訪れた。

3週間。
彼とお付き合いをできたのは、わずかに3週間。
歴代最短だ。
これを付き合っていたとカウントしていいいのかも微妙だと思う。
だから、誰かに話すときには人を選んでこのことを話すようにしている。

でもしっかりと私は恋をしていたと思う。
で、一目惚れだからこそ、世界観や価値観の違いについていくことは到底難しかった。こんなにも正義が違うなんて、同じ人間だとは思えなかった。

分かりあいたいのにどう頑張ってもわかりあえない。
苦しくて切なくていっぱい泣いた夏だった。
それを信頼できる人に伝えたらものすごく寄り添ってくれた。
相手の職業だけで判断しない人も世の中いっぱいいるんだなと気づくことができた。

一方で心無い言葉もほんのりもらった。
この恋がどんなものだったのかなんて、究極本人にしかわからないものなのだから、あまり気にならなかった。
でも一般的にみたらきっとそう見えるんだなってこともわかる。

◎          ◎

恋心はそれさえも乗り越えようとするパワーを秘めている。
ほんと不思議。
一目惚れは一層強いんじゃないかとさえ思う。
確かに恋は苦しくて、もうわざわざホストの人を恋愛対象にしないと心に決めて、一目惚れの恋もやめようと決めている。

でも、周りにどういわれても、知らないものを決めつけるのではなく自分の目で見て確認したいし、これはずっと大切にしていきたい。
そして一度なら一目惚れの恋だっていいじゃない。
盲目だけれども。

って思う大人になった私だった。