意識の面でもコロナ緩和がより進むであろうこの夏。
すでに梅雨入りをし、日本列島は着実に来る夏の準備を始めている。
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私のこの夏のマストアイテムは、ずばり「恋」。
「愛」ではなく「恋」、というところが個人的に肝だと思っている。
よく「ひと夏の恋」なんて言われるが、夏は愛よりも恋が似合う気がする。勝手に。
夏の暑さのせいにして…、夜で歩きやすくなる季節だから…、なーんて、自分に言い訳をしても許される(?)と思えるくらい、のびのびできるのは嘘じゃないだろう。
学生最後の夏。思いっ切り恋で苦しんで笑いたいのだ。
実は、私は学生と言ってもこの晩夏で30歳になる。
周囲では2人目の子どもが産まれて、離婚の話もちらほらという年だ。
そんななか、学生だからと定職に就かずに、気ままに本を読む生活をしている。
もう二度とこんな夏を味わうことができない。
だからこそ、そこに恋という変数を入れて安易に予測ができない思い出を作りたい本音がある。
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私と彼が最近よく行く朝から深夜までやっている居酒屋がある。
そこは元蕎麦屋さんというバックグラウンドがあるものの、「どんな人生を今まで歩んできたのだろう」と興味を抱かせる人が集まってくる異質な場所だ。
平日の夕方、彼と私はよくそこで待ち合わせてハイボールやらウーロン杯をいただく。
駅近ということもあって、ただ食欲を満たすために集まる人が多いが、酔っ払って突っ伏している人もいる。
そんな人々を見ながら、夜が来るのを待つのが私の最近のお気に入りだ。
きっと、もっと暑くなれば一瞬の涼みを求めてもっと多様な人が来てくれるのではないかと密かに期待しているのだ。
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そして徐々に暑くなってきた先日、面白いカップルに会った。
そのカップルは、ちょうど私と彼の後ろの席に並んで座っており、何かしらのお酒を飲んでいた。話の感じや雰囲気から結構飲んでいることが分かったが、徐々に男性の声が大きくなっていく。
すると突然その男性が店員に怒鳴った。
「いつになったら蕎麦が出てくるんだよ!!」
ついビクッとなったのは私と彼との数人だけで、ほとんどの客は通常運行。気にも留めない。
しかも店主がキッチンから出てきて「うるせーな。今作ってんだよ」と言い返すオチ。
それに火がついたのか、立ち上がって文句を言い続ける男性。しかし店主は相手にせずキッチンに戻っていく。再び現れた時には手に蕎麦。「ほらよ」と一言。
これはさすがに火に油……かと思いきや、隣に座っていた彼女が彼の肩に手を置いてなだめ始めた。
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何と声掛けたのか分からないが、あれだけ苛立っていた男性が座って、なんと、問題の蕎麦をすすり始めたのだ。
文句はぶつぶつ言いながらもしっかり完食したことを見届けた。
これが恋の力なのか、と感動したワンシーンだった。
時に、感情のコントロールをできなくさせ、そして安心要素となる恋。
30歳という新しいステージに先立って、今一度その強力さを実感することが今夏の目標だ。 きっとこの夏教えてくれることが、30代の私に勇気を与えてくれることを願っている。
30代の夏のマストアイテムは愛にしたい。いや、夏だけに問わずオールシーズンで。