私は人に対して一目惚れをした経験はほとんどないかもしれない。
今まで好きになった人も、付き合った人も、第一印象が一番大切かもしれないけれど見た目から好きになったというよりもその人の話す声の感じとか、些細だけど優しさの伝わる気配りとかに、きゅん、とすることが多かったように思う。

あとは香水じゃないその人の纏う香りの感じとか、LINEでの言葉選びに対してのきゅん、などが積み重なり、それらがいつの間にか「好き」を形成していった私は、後からじわじわ~と、好きになった人のくしゃっとした笑顔をかわいいなぁと思ったり、この人の横顔カッコいいなぁと思ったりすることが多いかもしれないことに気付いた。

好きなアーティストもいるけど、その人たちに対しても一目惚れで好きになった訳じゃない。その人の外見ももちろん素敵だけど、その人たちの歌声や歌詞、パフォーマンスから気になって、その楽曲を調べて何度も曲を聴くことでその曲をいつの間にか口ずさんでいたり、歌番組でそのアーティストを探すようになったりしていつの間にか好きになっている。そして、いつの間にかライブに足を運んでいるパターンになっていることが多い。

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人に対しては一目惚れをした経験はほとんどない私だけど、モノに対しては一目惚れをした経験が結構たくさんある。この間もちょうど一目惚れをしたところだった。

仕事終わりは大体疲れているからそのまま自宅へ直帰することがほとんどだ。その日もたくさんの仕事を片付けた後で疲れていたはずなのに、欲しかったものも特になかったのに、私はなぜかふらっと、近くのショッピングモールへ立ち寄った。
今まで立ち寄る機会もなかった一階のセレクトショップの前を通りかかった時、サーモンピンク色のハンドバッグと目が合った。そのまま通りすぎるはずが、店内に足を踏み入れていつの間にかそのバッグを手に取ってしまっている。

めちゃくちゃかわいい。思わず一目惚れしてしまった。

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優しい印象の少しくすんだサーモンピンク色のそのハンドバッグは、クロコ風の型押しが施されていて、持ち手はバンブーになっている。クロコ風の模様と竹素材が大好きである私のストライクゾーンにそれがドンピシャではまる。それに追い打ちをかけるように、中を開けてみると内側にはポケットもついているし、開け口はチャックだから中身が飛び出る心配もない。そして、バッグと同じ素材で作られたコロンとした小さなポーチがバッグに付けられている。どうやらこれは取り外し可能なようだ。

少し値が張るけど、偶然キャンペーン中で少し安くなっているし手の出せない金額じゃない。どうしよう、買っちゃおうかな。
でも、自宅に帰れば他にもバッグはあるし、持ち手が小さいハンドバッグだから肩にかけたりはできない。今までそのようなバッグは持ってなかったから使いこなせるか自信はあまりない。
「せっかく一目惚れしたんだから買おうよ!」という私と「でも別に必要ないよね?これを目的に来たわけじゃないよね?」と冷静に突っ込む私に挟まれて、一人でうーん、と唸っていると若い女性の店員さんが話しかけてくれた。

「こちらのバッグかわいいですよね」
「本当に可愛いです……色も持ち手もどこもかわいくて……でも、ちょっと迷っていて」
と、正直に一目惚れしたけど購入を迷っている理由を伝えた。正直に伝えたから嫌な顔をされるかなと思っていたけど、店員さんは「そうですよね、分かります!」と共感してくれ、私のように先日欲しいバッグを見つけたけど、たくさん迷ってその場では即決して購入しなかった経験を話してくれた。数分前に嫌な顔をされるかもと思った自分を反省した。

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そして、「大切なお買い物だから、ゆっくり考えてみて下さい。あ、少々お待ちください」と、私が自宅に帰ってもゆっくり吟味できるようにと、バッグのイラストやその特徴、品番を手書きで裏面に記入した彼女の名刺を帰り際に受け取った。

その日商品は購入しなかったけど、彼女の顧客の立場に立った接客やとても細やかな心遣いに感動して、私はバッグだけでなくその彼女の接客にも一目惚れした。

その日は帰宅し、自宅のクローゼットにある洋服たちとそのバッグが合うのか考えてみたり、そのバッグを販売しているブランドのInstagramを探してみたりした。彼女がイラストや品番を書いてくれたおかげですぐにその商品を見つけることができたし、そのInstagramでは、どれくらいそのバッグにモノが入るかリール動画で紹介されていて、実際に自分が使う時のイメージがしやすくなった。

その後もまた実物を手に取るため店頭へ行ったり店員さんに相談をしたりした。他にもブラックやホワイトのカラーもあったけど、やっぱり私はこのサーモンピンクがいい。最初に足を運んだ数日後、私はそのバッグを購入した。

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あの時一目惚れしたハンドバッグはやっぱり可愛くて、それを持って出かけるだけで気分も上がる。そしてそのバッグを見るたび、そのお店を通るたび、その時嬉しかった彼女の丁寧な接客を思い出して、私もどんな人に対しても丁寧な心配りができる人でありたい、といつも背筋が伸びるような気持ちになる。

こんな幸せな気分になれる素敵なバッグと出合え、素敵な店員さんと巡り会えて本当に私はラッキーだった。

今の私の生活を支えてくれている冷蔵庫などの生活家電からリップやマスカラなどのコスメたち。自分が購入したモノたちはもちろんかわいいものだったりデザインがツボだったり、見た目が好みのものや使いやすい実用的なものが多い。

一目惚れがきっかけで購入したモノもたくさんあるけど、一つひとつにはきっとそれぞれ購入に至ったストーリーや思い出がある。普段の生活ではそのモノがあることが当たり前で、心に余裕がない時ほど雑に扱ってしまいがちだ。今一度、購入当時の嬉しかった気持ちや一目惚れして購入した時のことを思い出して、私を取り囲むモノたちに感謝しながら毎日を過ごしていく私でいられたらいいなと思う。

そして自分がビビッときた時の直感を信じて、これからも人やモノと一目惚れから始まる出会いや巡り合いを楽しみながら生きていきたい。