私には、幼い頃から妄想癖がある。
どこかの国のお姫様、ホグワーツに通う魔法使い、好きな人の恋人、新進気鋭の小説家……などなど、1人っきりの時、頭の中で作り上げた世界で遊ぶことが日課だ。
生まれてから20数年、妄想だけは毎日欠かさずしているので、立派なルーティンワークとも言える。

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そんな私が最近ハマってるのは、夜寝る前、布団に入って行う妄想だ。
ここ数カ月は専ら、「人気急上昇中の11人組女性アイドルグループの最年長メンバー」として、眠りにつく前の数分を過ごしている。

「最近はありがたいことに、グループとしての活動の他に、個人でドラマや初舞台にも挑戦させていただきました。忙しい日々でも大切にしているのは、ファンの方とのコミュニケーションです。
やっぱり今の自分は、オーディション番組の時から支えてくれたファンの皆様のおかげなので。それに、さりげない日常をメールやブログを通して受け取ってくれる人がいるって、とっても幸せなことなんです。これからも、ファンの方と一緒に歩いていきたいです」

上記は、私が布団の中で妄想した、「アイドルの私が答えている、雑誌のインタビュー記事」だ。
視聴者投票型のアイドルオーディション番組に、最年長で歌、ダンス共に未経験ながら、なんとかデビューメンバーに滑り込む。親しみやすい笑顔と、ファン想いで接触イベント時の神対応が魅力。メンバーカラーは黄色。

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どこかで見たことあるような設定を何個も使って、作り込んだ妄想をしているなんて、恥ずかしすぎて誰にも言えない。

それでも、これを妄想していると、なぜだかぐっすり眠れるし、朝の目覚めも良い。

今の日々に大きな不満があるわけでもないし、本気でアイドルを目指していているわけでもない。正直に言うと少し憧れてはいるが、とてもとても大変な職業だと思うし、できるわけない。

それでも、私は妄想を続ける。
もう1人の自分の人生を眺めている気分になってなんだか楽しい。

ラフなTシャツにキャップを被り、何時間もダンスの練習をする私。レコーディング時、プロデューサーからのアドバイスをメモする私。東京ドームのステージで、トロッコに乗ってファンサービスをしまくる私。

たとえ妄想上の自分だとしても、何かに全力で打ち込んだ気分になるのは気持ちいいし、元気をもらえる。
妄想は自由で、私はどこまでも飛んでいける。

私が妄想をやめられないのは、きっとそこに無限の可能性を、幻でも感じるから。
「妄想の世界での自分みたいに、現実を生きる私も、精一杯生きよう」
たとえ幻の光景だとしても、妄想でもらったパワーは、リアルを生きる私の原動力となるのだ。