自分のくせって、なかなか気づかない。
気づくことがあるとするなら、他者を自分の中に住まわせた時だろう。

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私にとって、それは写真だった。
友達が撮った私の写真。肩が内側に入っている。
「あれ、私って姿勢わるいな」
全く自覚のなかった姿勢の悪さを目の当たりにして、驚く。
肩を外側にまわして、ぐっと姿勢を正してみる。
同時に、おっぱいが前へ出る。
この瞬間、私は理解した。
「ああ、私これが嫌だったんだった…」
肩が内側に入っていたのは、おっぱい隠しのためだった。

私は、胸が大きい方だった。
男女問わず、大きいねと言われることはざらだった。
慣れていたのもあるが、言われて良い気も悪い気もしなかった。
ただ、どうしても嫌な気持ちになる時もあった。
私の知らない人が、揉むジェスチャーをしてきた時。
何カップか当てようって盛り上がったよと言われた時。
Tシャツ着ると際立っていいねと言われた時。
私のあずかり知らぬところで、私の身体の一部分だけを見て、消費されている気持ちになった。どれもこれも、男性だったこともあり、性的に消費されていると思わずにはいられなかった。

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そんな嫌な気持ちが直結したわけではないが、年齢と共にワイヤーブラが苦しいと感じるようになった。
無理するのも良くないと思い、ワイヤレスブラに切り替えた。
ホールド力もかなり落ちる。
おっぱいが垂れてしまうという懸念がないわけではなかったが、ワイヤーの苦しさに比べればそんなことはどうでもよかった。
これまで懇切丁寧にワイヤーブラの試着に付き合ってくれた店員さんには、おっぱいの形がくずれると怒られそうである。
だけど、身体は心地良い。
締め付けが無くて呼吸がしやすい。
なくなったのは締め付けだけではない。
おっぱいを性的に消費されることも、ぱたりとなくなったのだ。
おっぱい自体の大きさは変わらないのに、ブラを変えただけでこんなにも世界が変わるものか。と驚いた。

おっぱいが小さく見えるだけで、嫌な気持ちになる回数が減るなんて。
私はそんな世界が好きになった。ワイヤレスブラになってからも、どうか性的に消費されることがないようにと願って、どんどん肩を内側へ入れることで、おっぱいの突起をなくそうとしていたのだと思う。

友達が撮ってくれた写真が、そんな自分の癖に気づかせてくれた。

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ただ問題なのは、この癖に気づいた後のこと。
姿勢の悪い自分は、正直好きだと思えない。
他人におっぱいを性的に消費されたくなくて、ジャッジされたくなくて、姿勢が悪くなっているという事実に変更を迫りたい。
堂々ときりっと立つ自分でありたい。

おっぱいを性的に消費されることが、ほぼなくなった世界で悠々自適に泳いでいた私が、再び消費されるかもしれない可能性のある世界と対峙する勇気はあるか。
何を言われようと、マイボディマイチョイス、と言えるだろうか。
ボディポジティブを実践できるだろうか。
いっそワイヤーブラを復活させて、どんな世界が待ち受けてるか体当たりしてみようか。
いろんな思いがよぎる。
少しずつ、少しずつ、自分が好きだと思える身体に近づけばいい。
ふいに撮られる写真に、背筋がのびた自分が写るその日まで。