デート、と言えば、日にちや行く場所を決めて、食事や体験にお金を使って、メイクや服装も気合いを入れて…と、そんな事を思い浮かべる。そうしたデートももちろん素敵なのだが、私には、そんな項目たちは皆無でありながら、それでいて心に色濃く残っている、ずっと忘れることのできないデートの思い出がある。
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私が高校2年生の時、当時付き合っていた同い年の彼氏はとにかく優しかった。何でも私ファーストで、連絡もマメにしてくれて、放課後に私のバイトのシフトがある時は、夜道に1人は危ないからと必ずバイト先に迎えに来てくれた。
真冬のとてつもなく寒い日、その日も私はバイト先にいた。毎週月曜日と水曜日、部活の無い週2日勤務していたのだが、毎度毎度迎えに来てもらうのをさすがに申し訳なく思い、「今週はシフト入ってないよ!」と、嘘をついたうえで働いた。
バイトを終え外に出ると、風も強く吹き一気に全身が凍てつく。自転車に乗って帰るために駐輪場へ向かうと、見慣れた人影があった。まさかと思い近づくと、想像に違うことなく、彼氏の姿があった。
「え、なんでいるの?ていうか、こんな寒いなかいつからいたの…?」なかなか頭の処理が追いつかずにいると、私に気付いた彼氏が笑顔で手を振ってきた。
「なんでいるの?今日シフトあるって言ってなかったのに…」私がそう言うと、彼は、「前から、いつも迎えに来てもらうの申し訳ないって言ってたじゃん。それで気い使って、今週はシフトないって言ったんだろ?いつもすぐLINEの既読が付くのに、今日の放課後送ったLINE、全然既読にならないから、すぐ分かったよ。さ、帰ろ」そう言って、優しさに溢れた笑顔を向けた。
…完敗だ。私がどんな人間かということを分かりきったこの人に、ちっぽけな嘘を向けても何の意味もなさない。私たちは、寒風吹き荒ぶ冬の夜道を、互いの温かさを確認するように手を繋いで、ゆっくりと歩いて帰った。
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あれから数年。非日常的な体験をしたり、サプライズをしてもらったり、色んなデートをしてきたけど、あの日ほど心が温まったデートはない。約束もせず、お金もかけず、バイト終わりで髪も服もよれよれの状態であったけれど、私のことを分かり切った彼の優しさに触れたあの冬の日の帰り道デートこそ、私にとっては最高のデートとして記憶に焼き付いているのだ。