ちょうどこのエッセイを書いているタイミングで、お母さんがストレートパーマをかけて帰ってきたのでタイミングが良すぎて笑ってしまった。しかもカラーをしに行ったのに美容師さんの「梅雨の時期なんで、かけると膨らみにくくなりますよお」という巧みな話術に惑わされたらしく、ストレートパーマをかけたと話していた。惑わされたとは言いつつもたぶん少しくらいかけたかったんだろうなと思うと微笑ましかった。

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 美容院に行くあるあるだと思うのが、言葉に乗せられてとか断れなくてで、ついついオプションメニューを追加してしまうというもの、私もわかる、トリートメントくらいの値段だとめちゃくちゃ揺れる。けど私は必要のないものだったら断るようにしている。

私は以前、コンプレックスであったくるくる天パに縮毛矯正をかけて劇的に変化し、最高なサラサラストレートになった経験を書いた。高校生の夏の話だ。

そんな私が今回書きたいのは、大学生の頃から、自分のそのままの髪の毛、天パを愛せるように、受け入れるように、生かせるように変化した話だ。髪型一つで人はこんなにも見た目、心、どちらの意味でも変わるんだ。という証明が最強にできる人間が私なんじゃないかと思う。

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大学に入学して、初めての夏、相変わらず私のくせ毛が猛威を振るい北上…ってそれは台風か、その頃、一つの悩みを抱えていた。高校の頃に縮毛矯正と出会い、髪が伸びるたびに何度かかけてきた私は、このまま永遠に縮毛矯正を続けるのは良くないかもしれないと思っていた。というのも縮毛矯正は決して値段は安くないし、髪や頭皮へのダメージもある。あと、ある程度髪が伸びてくると、毛先のほうはまっすぐなのに、根本のあたりがうねるという問題もあった。

「一旦、天パリターンズしてみる?」

自分のくせ毛姿を見てみた。お風呂の後、いつもドライヤーのあとにカールドライヤで内巻きまっすぐにするのが習慣だった私は、一旦すべてを放置してみた。案の定爆発した。だけど次の日、ドライヤーをするだけで終わらせてみると、なんだかいい感じのくるくるになっていた。そのときこれまで投げかけられてきた言葉が頭の中に溢れてきた。

「百ちゃんの髪ってふわふわでくるくるしてて可愛い」

「パーマかけた?」

「え、天パって言われなきゃ、パーマかけてきたと思うわ」

「いいなあ、私直毛だから全然アレンジできなくて羨ましい」

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ああ、そうか。私がずっとコンプレックスだと激しく思い込んでいたから、なんにも響いてこなかった周りの意見たちって、全部褒め言葉だったのかもしれない。褒められてもどうせないものねだりだろ、くせ毛の手入れの大変さも知らないで、なんて角の立つことばかり思っていたが、そうだ私はみんなの「ないもの」をねだらずとも持っているんだ。

そう考えが変わる瞬間が訪れたのだ。

ありのままの自分の髪の毛で生きてみようかな。そう思い、自分のくせ毛を生かせるヘアスタイル、スプレーやムース、オイルを調べてスタイリングに取り組んでみた。最終的に面倒くさがり屋な私は、スプレーでくせを良い感じに出す技を覚えた。それは、本当に時間のかからない方法だった。

「え、可愛いじゃん」

反応は好評だった。ああ、本当に中学の頃の片時もコテを手放せなかった私に言ってあげたい、「そのくせ毛は可愛いんだよ」って。思い込みが自分のコンプレックスに追い込んでしまうことの危うさも改めて知ることになった。

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それからは自分を押さえつけない、自分らしい髪型を愛せるようになった。だから今は、美容院でオーダーをするときには「くせ毛がいい感じに出るカットでお願いします」と言う。

カットモデルや、研修モデルで美容院に行くときは、私のくせ毛はとても勉強になるからありがたいと言われる。技術の向上に自分が役立てて嬉しいという気持ちもある。

今の私は、くせよりも次はどんなカラーにしようがいつも頭にある人間になった。でももしかしたらまた、縮毛矯正をかけて、さらさらストレートになりたくなる日が来るのかもしれない。どんなときだって自分の心のままに髪の毛を変えていこうと思う。