どうしたことか、昔からいじめられやすい。
理由はなんとなく自分でも分かる気がするけれど、ずっといじめられてきた人生だった。

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中学の頃はバスケット部の顧問の先生にいじめられた。空気のように扱われ、立っているだけの2時間を毎日毎日過ごした。みんなが冷房の部屋でアイスを食べる中、外でひたすら暑さ耐えた。たまに用事があると"それ"と言われ、それ以外は1.2.3.4の"4"にすらなれなかった。けれど私は逃げなかった。というよりも逃げられなかった。「逃げたら負け」という親の言葉に囚われていたから。

大学生になるとグループのとある男の先輩に会うたびに殴られた。理由は「女はお前だけだから」とのこと。その先輩に会うのが怖くて、大体の時間割を把握し、極力会わないようにして過ごしたけれど、グループの集まりなんかがあればどうしても顔を合わせてしまう。彼と会うたびに血の気が引いた。けれど、その時も私は逃げなかった。私を庇ってくれる友達に申し訳なく感じたから。同じグループのみんなと仲良くしたかったから。

会社に入ると、入社前から有名だった上司の下に配属となり、見事に標的になった私は毎日が戦いだった。私物がゴミ箱に捨てられたり、「辞めればいいのに」なんて暴言は日常茶飯事。嫌がらせのせいで休みが潰れたり、仕事が台無しになったりなんてことはしょっちゅうだった。ストレスは凄まじく、蕁麻疹が出たり過呼吸になったり、出血を伴う病気になったりもしたけど、全て"ストレス"だと言われた。けれど私は逃げなかった。それで辞めるとなんだか負けな気がしたから。

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その後の転職先でもいじめがあった。けれど私は3ヶ月で辞めた。もう頑張らないと決めたから。

大人になって思う。逃げることは負けじゃない。むしろ虐められている場所にとどまる方が負けだ。もし、目の前に虐められていて辛い人がいるなら、 「今すぐ逃げろ」と、言いたい。

まず一つ目の理由として、虐めた方は何も覚えていない。中学の顧問の先生は、市の職員が来て学校で会議が行われたレベルのいじめをしたのにも関わらず、いまだに家族写真にメッセージが添えられた年賀状を送ってくる。

大学の先輩は、奥さんの前で「仲の良かった後輩」なんてニコニコしながら紹介する。会社の先輩はわからないけれど、きっと私のことなんてもう記憶にすらないはずだ。私はこんなに鮮明に覚えているのに相手は何も、何も覚えていないのだ。

二つ目。その時間に他のことが出来る。例えば立つだけの為に行ったバスケット部での時間を他の習い事に充てていたら? 仕事のストレスで寝込んだ時間の分、何かの教室にでも通っていたら? 今思えば時間の無駄遣いをしてしまったと後悔しかない。虐めてくる相手に打ち勝ったところで何も得られない。そうであれば違うところで違う頑張りをするべきだったと思う。

最後にいじめられる時はどうしたって無駄だ。いじめられていると"自分が何かしたのか"どこを直せばいいのか"なんて考えていたけれど、人を虐める人は虐める。いくら努力したとしても。

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世界が変われば息の吸いやすさも、見える世界も一気に変わる。その場を離れることは勇気がいるかも知れないけれど、時間が経って仕舞えばなんてことはない。その場に留まっている方が後々大きな後悔をすることになる。

というのは歳をとったから思えるのかも知れないけれど。そう思えるようになってから移った職場でも案の定いじめられ、3ヶ月ほど頑張ったけれど辞めた。根性なしと思われるかも知れないけれど、私は自分が1番大切だ。