髪を切ると、自分じゃないみたいでテンションが上がる。髪型を変えるだけで、顔の印象までもが変わる。私は自分をご機嫌にして、モチベーションを上げるために美容室に行く。さらに髪型を変えることは三か月に一回、自分への投資も兼ねた大イベントでもある。
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美容室に行くと、「今日は切りますか」と尋ねられるのを待ちかねたように、美容室の予約が取れたときからスマホの写真フォルダーに保存してあった画像を見せながら、「憧れの髪型」にしてほしいとオーダーする。美容師さんによっては、オーダー通りに施術してくれないお店もあって、美容室選びも妥協できないものだ。
生まれてからずっと癖毛である私は、いつもストレートパーマをお願いしていて、特に前髪の癖がひどくストパーをかけてもらって髪をアイロンでセットしてもらったときは、目の前の鏡には四時間前とは別人のような艶々で美しいストレートヘアーの私がいた。そのとき、美容室に来てよかったと心から思うし、また綺麗にしてもらおうと自信が満ち溢れ真っ新な気持ちになるのだ。
こうして自分の髪型を変えると、何度も鏡を見たくなる。また、好きなアイドルが髪型を変えてテレビに出演していると、「ビジュアル良き。最高!」とガッツポーズしたくなって、まるで自分のことのようにテンションが最高潮になるときも少なくはない。
先日、新体制で第二章がスタートしたアイドルグループのメンバーが、芸人さんの半生を描いたドラマの最終回の番宣で情報番組に出演していた。デビュー当時から髪を染めたりしながら、色んな髪型とチャーミングな笑顔でファンを魅了してきた彼が、今回はドラマの役作りのために髪を少し伸ばしていた。その撮影がクランクアップしてから、彼はイメチェンしていた。その情報番組で見た彼は、さらに魅力が増していた。自分の良さを自分で分かっているかのようで、いつも笑顔でデビュー当時は年上のメンバーに囲まれながら可愛い弟的存在だった彼が、大人になってその魅力が活かされた髪型になっていた。
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髪型を変えただけで、その人の魅力が全面に引き出されることは素敵なことである。イメチェンで髪型を変えると、自分だけではなく周囲の人も新鮮な気持ちになり魅了されていく。表情だって豊かになるし、その人の外見だけでなく内面をもっと知りたくなったりもする。
ただ髪型を変えるのではなく、ひとりひとりの印象を良い意味で変えていく美容師という仕事には、やはり究極の接客業だと感じられる。顔の額縁でもある髪の毛は、身だしなみの一つでもあるし、その人の第一印象を決めて惹きつけるパワーがあるはずだ。
高校生になると、毎日ヘアアイロンで前髪を巻いた朝を思い出す。伸びかけの前髪が、鬱陶しくならないようにグッと巻き上げると、前髪が整う。それだけで、今日一日頑張れる。このルーティーンは、今でも私のモチベーションを高め一日をハッピーに生きる背中を押してくれている。世界で美しい私と信じられる夢が芽生えるほど、髪型ひとつで生きる価値が見出せる。そんな不思議な力が、世界中の人々の髪の毛に宿っているのかもしれない。
そして、ヘアアイロンで髪の毛を巻くことはメイクと同じである。朝起きて、髪の毛がはねていたり、寝癖がひどいときだけでなく、毎日継続することで「美しく生きる」自信が芽生えていくきっかけになる。まるで、自分じゃない新しい自分が目覚めていくように、力が湧いてくるのだ。もともと持っている自分の魅力を最大限に引き出す。それを叶えることができるのは、髪型なのだ。
ささやかながら、人生や未来までをも変えていく髪型を手に入れるために美容室という魔法の世界で、また変身してこようと思う。