ロールモデルといえば、身近にも遥か遠いところにもたくさんいるのだが、このエッセイにどうしても書いておきたい人がいる。女優・歌手として活躍している、上白石萌音さんだ。
いつも通り、親しみを込めて「萌音ちゃん」と呼ばせていただく。年齢は萌音ちゃんの方が4歳ほど上なのだが。
何を隠そう、私とエッセイを出会わせてくれたのが萌音ちゃんなのだ。エッセイを書く上で切っても切り離せない萌音ちゃんの話を、ここに綴ろうと思う。
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萌音ちゃんを初めて認識したのは、おそらく2016年。萌音ちゃんが声優を務めたアニメ映画「君の名は。」の主題歌、「なんでもないや」を妹にオススメされたのがきっかけだったと記憶している。音楽番組で萌音ちゃんが歌っているのを聴いて、透明感のある歌声に鳥肌が立った。それからは、少し意識して萌音ちゃんの活躍を見るようになった。そして、「出会い」は突然やってきたのだ。
ある日、いつものように本屋を歩き回っていると、棚の空いたスペースに表紙が見えるように置かれた本があった。気になって本を開くと、中身は、私がよく読むような小説ではなく、エッセイだった。
今までエッセイを読んだことがなかったのに、一篇読んだだけで虜になったのを感じた。言葉の一つ一つから筆者の人間性がひしひしと伝わってきて、もっと筆者の感性に触れたいと思った。このエッセイのタイトルが、「いろいろ」。萌音ちゃんのエッセイだったのだ。
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『本との出会いは人との出会いに似ている』とエッセイに書かれている。初めて読んだとき、「人は、出会うべきタイミングで出会うようになっている」と聞いたことがあるのを思い出した。本当にその通りだと思う。
後になって、「あの出会いは私にとって必要な出会いだったんだ」と思う出会いもあれば、出会った瞬間から必然的な出会いだと思うこともある。萌音ちゃんのエッセイとの出会いは後者だった。
いつも私は本屋で、たくさんある本を眺めながら気になるものを手に取り、脳内で会議を始める。この本を、今、買うべきのか。今は買わずにタイトルをメモしておいて、数日経っても買いたかったら買いにくるのか。図書館で借りて読むのか。この3択の中からどれにするかを、少なくとも10分、長くて30分、本の表紙と睨めっこしながら考える。自分の欲求のままに本が買えるほど、たくさんのお金はない。だから、私に寄り添ってくれる本や好奇心を掻き立てられる本を吟味して買うことにしている。
しかし、萌音ちゃんのエッセイは、普段行うはずの脳内会議をすっ飛ばしてレジに本を持っていってしまったくらい、私のアンテナがビビッと反応した。こうして、私は萌音ちゃんとエッセイに出会った。
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萌音ちゃんと、エッセイを通じて改めて出会ってみて感じたことは、萌音ちゃんがとても素直でまっすぐな、向上心のある人だということ。やさしく包み込んでくれるようなおおらかさと、学び続ける姿勢から得られたであろう知性が、言葉から溢れている。
そして、何度読んでも飽きない、むしろ深みが増すような文章を目の当たりにして、このエッセイをバイブルにしようと思った。同時に、萌音ちゃんがロールモデルになった。
萌音ちゃんのエッセイを読んで、漠然と「萌音ちゃんのような人になりたい」と思っていた。まずは形から入ろうと、萌音ちゃんがやっている習慣を真似してみた。でも、それ以外にどうしたらいいかまでは考えなかった。
最近、たまたま「かがみよかがみ」に出会い、「萌音ちゃんのようなエッセイが書きたい」と、思いのままに書いて応募してみた。すると、採用の通知をいただいた。とても嬉しかったし、やっと萌音ちゃんに近づくスタートラインに立てたような気がした。
これからもずっと、萌音ちゃんは私の憧れで、お手本にしたい存在でい続ける。向上心のある萌音ちゃんのように、私は私なりに進んでいきたい。