私は社会人7年目の独身アラサーだ。つい3週間前まで飲食店で働いていた。職場の大嫌いなパートさんから逃げた。

4年前、その店舗に配属した初日。「それ、変やで」初対面の私に向かって言った、例のパートさんの第一声である。自分の親より10〜15歳は年配の方だった。

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店長から「これ着てね」と初めて見る制服を手渡された。更衣室の中で一人、手探り状態で着替える。どうしても長さが微妙に余るエプロンの紐を、どう結んだらいいか分からなかった。一瞬見た店長の姿を思い出しながらどうにか着替え、やっと外に出た。あとで誰かにちゃんと聞こう。そのタイミングだった

「すみません。正しい着方教えていただけませんか?」突然の大声に驚きつつ、私はパートさんに聞いた。「知らん。それくらい自分で考えて」モヤっとした気持ちが残る。まだ挨拶もしてないのに。正しいエプロンの着方は店長に教えてもらった。

どうやらそのパートさんは「新人いびり」をずっとし続けているらしい。「だからね、何も反論せずに『はい』と返事していたらいいよ」と店長や他のパートさんは言う。内心、だるいなと思った。先を越されて自分の立場が危うくなるのが気に入らないのだ。

本当に賢く仕事ができる人なら、そんなつまらないことはしない。周りの空気が悪くなることをするより、もっと仕事に貢献しなよ。新人をいびることでしか威厳を保てないのはかわいそう、とも思った。

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その後は他の優しいパートさんのおかげで、何とかこの4年間やっていた。しかし、相変わらず例のパートさんだけ何故か当たりがキツかった。4年が経ち後輩も数人出来て、とっくに「新人」ではなくなったにも関わらず。今年に入ってから特にエスカレートしていった。

注意をする時に包丁を振りかざす。お客様の前でも平気で大声を上げる。店長に虚偽の報告をする。さすがに身の危険を感じた。

店長や上の上司にも逐一報告する。一瞬止めるが、誰もいない隙を狙ってやって来る。休憩時間にもズカズカと私の側に来る。その執拗さに気味が悪くなった。何度も店長にシフトを被らせないように頼むが、人手不足でうまくいかなかった。狭い店舗内で顔を1日合わせず仕事をするのは無理だった。

なんでこんな傲慢な人のために、私たちが年金を払わなといけないのか?何度も嫌気が差した。まともに仕事を教えられないくせに、自分の思い通りにならなかったら「自分の伝え方、教え方が悪かったのかも」という考えではなく、「物覚えの悪いあの小娘のせいだ」という方向に平気でベクトルを向けられるのが私には理解できなかった。

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そこで私は「逃げる」ために動いた。こっそり転職活動を始めた。副業も始めた。今まで以上に節約を頑張った。語学、FP、料理関係など。仕事になる、ならないに関わらず、とにかく勉強になりそうなことや興味があることを何でも学んでいった。

仕事も疎かにならないよう後輩の面倒を積極的に見て、他のパートさんに「何かお手伝いできることはありませんか?」と声を掛けた。計画的に有給を取り、一人旅にも出た。日常から離れることで戦うエネルギーが戻ってきた。

そして「次が決まりました」と、店長に伝えられた。やっと一緒にいるとエネルギーが奪われる人から逃げられた。辞めたい、と思ってから3ヶ月後だった。もう、あの人に会わなくて済む。本当にやるべき仕事に集中できる。そう思えるだけで、心が楽になった。

だから命や自分の心が「危険!」と思ったら逃げよう、行動しよう。「石の上にも三年」とか「置かれた場所で咲きなさい」とか、正論っぽい名言は世の中にたくさんあるけど、心の声を無視しないで。世間の目を気にしないで。人生は一度きりだから、後悔しないように生きよう。