悔しいけど、恋の終わりは髪を切りたくなる。
なんで悔しいかって?それは、髪をバッサリ切ると「失恋したん?」が付き物だから。ある意味それって偏見じゃん。なんにもなくても髪を短くする人だっているんだから。
でも、私が髪形を変えるきっかけはいつも、髪を短くしたい願望が少なからず、いや絶対?入っている気がする。
私にとって、髪型を変える、髪を切る、カラーをする、パーマをかけるのは、変化の象徴として自分自身を認識できるアイコンにしたいからだと思っている。というのも、髪の毛は一番わかりやすく、そして簡単にイメージチェンジできる身体の一部であり、鏡の前に立った時、一番初めに目が向くところだと言える。だからこそ、「自分はこの髪と変わるんだ」「自分は髪を切って変わったんだ」と鏡の前で唱える呪文、いや、魔法のように気持ちを変化させるスパイスになるのだ。
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特に長い髪をばっさり切りに行くと決めたときは、翌日にすぐ行ける美容院の予約を取ったり、カットモデルの募集を見たりする。そのくらい衝動的かつ、勢いよく行動できるのが「美容院に行くこと」だ。なんて素敵な場所なんだろうと思うし、美容師さんという仕事もとっても素敵な職業だと思う。
過去最速で美容院に行ったのは、大学1年の夏、カットモデルの募集を昼に見つけて、その日の夕方、授業後にお店に行ったときだと思う。担当してくれたお兄さんも、まさか当日に「ベリーショート限定」のモデルさんが来てくれるとは思わなかったから、すごく喜んでくれていたのを覚えている。それに、「本当にこんなに短くしても大丈夫?」と心配してくれたのが微笑ましくて覚えている。確かそのときは、失恋したわけでもなく、なんか突然無性に、めちゃくちゃ髪の毛を短くしたい衝動に駆られて、人生で一番短くしたのだった。切ってもらった後の爽快感は最高だったのを覚えている。
体育が終わったあとにシーブリーズをつけるような爽快感。その時自転車を漕いで美容院に行っていたから、帰り道、風の気持ちよさでそのまま空までも飛んでいきたくなるようなテンションになっていた。そのせいもあって、普段だったら絶対することもない「一人でうどん屋さんに行く」をした。たまたま私の大好きな揚げナスうどんの看板が目に入り、吸い込まれるように入店した感覚を今でも覚えている。「普段勇気がなくてしないこと」がすぐにできてしまった。解放感、のような最高の気分だったな。
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ロングだった髪型をベリーショートにした次の日大学に行くと、まず私と気づいてもらえなくてわくわくしたし、私と気づいたときに友達の目がばっと見開かれるのも面白かった。そしてお決まりの「百ちゃん!!失恋したんかあ!!!」を頂戴した。だから、してへんねん。それはもう冗談のノリだから良しとして、髪型を変えるとこんなにもテンションがあがる時点で、人が無意識に人を髪型で判断しているのもわかるだろう。人の心理は本当に面白いなあと感じる。
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だからこそ髪型を変えることは、自分にとっても、周りにとっても変化の象徴になるのだと私は思っている。そんな劇的イメージチェンジを遂げてもしばらく経つと、自分も周りも慣れていくという怖い人間の習性もあるが…そしたら、それはそれで良しとしたり、次は、カラーでもしたくなったりする。
そんな私は髪を切りたくなっている。なんでって?それはまた無性に髪を切りたくなったから。恋の終わりに切った髪がまた伸びてきて、まだ彼を髪が引きずっている気がしてきたから。髪じゃなくて私の心が引きずってるんじゃないかって?うるさいわね!どっちもよ!さて、美容院を探そ。もちろんすぐに予約が取れるところを。