2022年2月23日。
気が付けば大学卒業間近。大学の4年間なんて、あっという間だった。体感としては、暑い夏の日にコップに入った麦茶を飲み干してしまうくらいのあっけなさだ。
あれ?これだけしかないの?もっと飲みたいのに……。そう思ってコップをさかさまにしても、中は空っぽだ。
私がどれだけまだ学生の身分でいたいと思っても、ぐいぐいと押し出されるように4月からは社会人になってしまう。その前に、大学生の自分を忘れてしまわないよう振り返っておきたい。

勉強もサークルもバイトもしたけれど、一番ためになったのは自炊

この4年間で私は何を身につけ、何を得たのだろう?
勉強もサークルもバイトもたくさんの時間を使ったし、どれも楽しかったけど、一番自分のためになったことは自炊だと思う。

大学は県外だったから、入学してから一人暮らしを始めた。実家では母や祖母がご飯やお弁当を作ってくれていた。私がキッチンに立つのは、せいぜいバレンタインの友チョコづくりか、家族のいない日に自分用のインスタントラーメンを作るときくらいだった。

初めての一人暮らしに張り切っていた私は、レシピサイトで作りたい料理をたくさんブックマークしていた。引っ越して初日に作ったのは鶏胸肉で作るチキンステーキだった。
料理しているとき肉が焼けるいい匂いが部屋中に広がり、成功を確信し自分にも料理はできるのだと嬉しくなったのを覚えている。塩コショウで味付けしたチキンステーキは、シンプルながらもとてもおいしくできた。

自分が食べたいものを、自分好みの味で作って食べれるのが魅力

その日から私はたくさんの料理を作ってきた。幸い、アパートの徒歩圏内にはいくつかのスーパーがあり、買い出しに困ることはなかった。
水曜日に卵が安く買えるところ、18時以降にお刺身が半額になるところ、地元の野菜が買えるところ、それぞれのスーパーに特色があり、食べ物を選ぶのは楽しかった。

自炊のいいところは、なによりも自分が食べたいものを作って食べれることだ。
チーズたっぷりのグラタンに、ミートボールスパゲッティ、半熟のオムライス、酢豚、具沢山のスープ、スパイスから作るカレー……。思い浮かべるだけでおなかが空いてしまう。
自分だけのために作るのだから、甘めにしたり一味を足したり、自分好みの味にできる。見た目が悪かったりちょっと焦げたり失敗しても、へっちゃらである。
手の込んだ料理じゃなくとも、自分で作るだけでとてもおいしく感じられる。まだ眠たい朝に、チーズトーストと目玉焼き、温かいカフェオレがあれば、それだけで幸せになれるのだ。

食べたものから自分が作られ、たくさんの人が関わっている

自炊をしていると、人間は毎日毎日よく食べるなあと感心する。
朝起きて食べ、ちょっと勉強や掃除なんかをしては昼ご飯を食べ、また勉強に戻っておやつを食べ、そして夜ご飯を食べる。ご飯を中心にして生活を送っているのである。

作っては食べの繰り返しをしていると、自分が食べたものから自分が作られているという当たり前の事実を強く感じる。それから、私が今食べている物が私のところに運ばれるまでにたくさんの人が関わっているのも感じる。
農家の方や配送業の方、スーパーの方などいろんな人の仕事があって私のもとまで食べ物はやってくる。その人たちもまた何かを食べて生きている。自分では感じなくとも、間接的に誰かの生活を支えたり支えられながら生きているのだと思える。そう思うと、食べ物や人に感謝できて、さらにご飯が美味しく感じられるのだ。

大学生活を振り返って、一番大きな気づきはこれだと断言できる。それに気づかせてくれた自炊は私にとってとても大切な習慣だ。
自分のためにご飯を作って一人で食べる。これが私の一人の楽しみ方だ。