私にはバイブルがある。
中学生の頃好きだった少女漫画だ。

この作品は、全国紙を発行している新聞社で記者として勤めているアラサー女性が、住んでいるマンションの前にいた20歳の男の子を「拾い」、ともに暮らし始めるところから話が広がっていく。「ペット」と「飼い主」からスタートする2人の関係が、少しずつ少しずつ甘く変化していく様子を描いた物語だ。連載期間は2000~2005年。

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私が2歳のときから5歳のときまでだ。全14巻。少女漫画としてはそこそこ長い方だと思う。中学生でそれほどお金がなかった私は、近所の古本屋で全巻揃えた。それから高校生くらいまでは、度々本棚から取り出して読み続けていた。

「現在の私」に行き着いたのは、この漫画があったからだと言っても過言では無い。それくらい、大きな影響を受けた。恋愛面においても、かなり響いてきている。
私の好みの男性像として、まずあるのは「背が低い人」だ。漫画に登場する20歳の男の子は、身長164センチ。私のこの好みは、彼によって形成されたものだと思っている。

「年下」「身長低め」これらの属性を持つ少女漫画に出てくる男の子のキャラは大概そうだと思うが、彼はいわゆる「カワイイ系」だった。家賃や生活費は入れておらず、本当に「飼われ」ている状態。家事も全然出来なくて、役には立たない。けれどちょっとあざとくて、癒しになってくれて、主人公のどんな姿も受け入れてくれる。

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これらの要素もそのまま、今の私の理想の男性像となった。男性のスーツ姿に萌える女性は多いと思うが、私は全然惹かれない。「バリバリ仕事してます」「社会に揉まれてます」みたいな雰囲気が苦手なのだ。冷静に考えて、将来を共に歩んでいくとしたら、そういう男性のほうがいいことは分かっている。

よく働き、よく稼ぎ、そのことを当たり前だと思っている人との方が、きっと幸せになれる。けれど、思春期に形成された好みというのは、深く根付いてしまってもう変えられない。

好みのタイプがこの漫画の相手役である彼なのだから、当然、私自身がなりたいと思うのはこの作品の主人公のような女性だ。
けれど、私とこの主人公とは、色々と違いすぎる。全国紙の記者をやれるくらいなのだから当然といえば当然だが、彼女はかなりのエリートだ。東京大学を出た後ハーバード大に行っていたという、漫画としてもやりすぎなくらいのエリート設定。そして身長170センチのモデル体型で美人。料理も出来る。それでいて努力家で、ちょっと抜けてる部分もある。

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どんなに頑張ったって、私は彼女にはなれない。けれど、好みのタイプ同様、こちらの理想も今更変えられない。仕事に心血注いで、周囲にも努力と結果が認められて評価されて、結婚したとしてもそれを続けていきたい。

だけど、実際に私が今やっている仕事は、それを叶えられるタイプのものではない。内容自体は楽しいけど、大きな成果をあげたり、高い昇給を望めるような仕事ではない。だからといって、転職しようとしたところで、これらを叶えられるほどの仕事が私に出来るとは思えないしなあ……。

ロールモデルとするには、彼女はちょっと格上すぎた。叶えられる範囲で、彼女に近づけたらいいなあとは思うけど。今の私には少し、遠すぎる。