今日も起きる。顔を起こしに鏡の前に立つ。
洗い終わった濡れたままの顔で少し決めてみる。
「うん、ちょっと可愛い」
言い聞かせるよう吐いたセリフ。
化粧水にコンタクトにメイクに…出かけられる服に着替えてもう一度鏡の前に立つ。
あぁ、なんて顔だ。
そうだ、自撮りをしてみよう。開くのはもちろんSnow。これが無いと自撮りなんてもちろんしたく無い。
この顔が最後でもSnowで誤魔化すなんてね。
◎ ◎
そう、私は今日整形をする。
学生の時は友達の喧嘩の仲裁に入ったら「ブスのくせに!」って言われたりしたっけな?どちらの味方をしたわけでもなかったのに、片方の肩を持ったと勘違いした子に「かげで2人で笑ってたんだ」と思わぬ裏切りされたの、懐かしい。
運動部の顧問になんかは「なんだその目は!?睨んでる!」なんて言って部員全員連帯責任だと走らされたりしたっけ。生まれつきですよー。なんてったって極めつけは母にチクった翌日「お前の母ちゃんに言われたから謝る、ごめんなー」だなんて。
いやいや、思ってないやんー!なんて心で突っ込みながら実際には傷ついてた。
お母さんは、私が中学生になった頃「手術受けたいならそれくらい出すよ」なんて言ってくれてた。母なりの理解と優しさだった。でも、何を言ってるかわからなかった。
恥ずかしい話だけど、私が鏡を見て気づいたんじゃない。周りが私をブスだと気づかせてくれた。
歳をとるにつれ、周りが化粧を覚えてどんどん可愛くなっていった。私は、
私は…。
◎ ◎
だから私は二重整形を受けた。
麻酔は効いているのに糸が通る感覚、
病院から出て瞼が内出血で濡れてる感覚、浮腫んでる感覚…
二重整形の技術が進歩したいまはDT(ダウンタイム)と呼ばれるものはそうきついものではなかった。
薬の効果もありすぐに腫れも引いた。
鏡をみる。
これが、自分…!
ブスやら睨んでるやら寝ているやらと言われた目はパッチリ二重に進化して、何も変わって無いはずのコンプレックスだったつり目までも可愛く思えた。今やチャームポイントだ。
毎朝起きるたびに鏡をみた、自撮りをした。メイクも楽しんだ。
「おはよう!私!」