私はこの春に大きく髪型を変えた。超ロングからショートに。その前に、ショートからロングに至るゆっくりとした、髪型チェンジもあった。

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もともと、ずっとショートで過ごしていたんだけど、ヘアドネーションをすることにして髪を伸ばし始めたのが、5年前。自分に生きてる価値があると感じられなくて、何か人の役に立つことをしたいと思ったのがきっかけで、ヘアドネーションのために髪を伸ばし始めたの。

髪が少しずつ伸びていくと、少しずつ心境の変化があった。

ボブくらいになったとき、ずっとショートにこだわってたのは、忘れられない元カレにショートがいいって言われたからだって気づいた。自分でも意識してなかったけど、別れてから心が不安定になるたびに、みじかーく切ってた。そうすれば、元カレにもう一度認めてもらえるかもしれないと思ってたから。

それからもゆっくりと髪が伸びていった。次第に、元カレの呪縛から解き放たれる気がした。誰かに認められるために髪型を変えるんじゃない、自分のなりたい自分でいるために容姿が利用できるんだって。

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もう少し髪が伸びて、アレンジができるようになった頃、着飾ることが楽しくなった。それまでは、あんまりメイクとかヘアアレンジとかに興味を持ってなかったけど、せっかく伸ばすと決めて伸びてきたんだから、アレンジをしてみようと思ったの。

顔回りの毛束をふんわり巻いたり、編み込みをしてみたり。毎朝の楽しみができた。髪だけ派手なのは変じゃないかと思って、メイクにもこだわり始めたらどんどん楽しくなった。女性として生まれたんだもん、女性としての楽しみを思う存分享受しようと思えた。

メイクやヘアアレンジをするようになると、周りの反応も変わってきた。かわいいねって言ってくれたり、ヘアアレンジの仕方教えてって言ってくれたり、今まではあんまりかかわらなかったような子たちとも話すようになったの。

それから、自分に自信がついた。確かに、昔どこかで聞いたことがあったの、女子が手っ取り早く自信をつけるためには容姿を磨くことだって。でも、こんなに効果てきめんだとは思わなかった。性格が明るくなって、人と話すときはいつも気を使ってばかりだったのに、自分の主張もできるようになった。どんな人と話すときにも気後れしなくなった。

自分でも驚きの変化だった。自分の生きてる価値があるとかないとかなんて考えることも無くなってた。

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それで、とうとうヘアドネーションできるくらい髪が伸びたから、ぷっつり切った。ひさびさのショート、それも誰かに認められたいからじゃなくて、自分自身で選んだショートヘアー。切った髪はどこかで誰かの役に立ってる。すっごくうれしかった。新しい髪形になったことも、切った髪が役立つことも。

ショートに戻ってからも、自分自身のために髪型を楽しんでる。初めてのブリーチをして、ピンクやオレンジに染めてみたり、ショートならではのアレンジをしてみたり。手がかかる分、自分を大切にしてる感覚がとても良いの。

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思えば、自分の意志で髪型をこんなに変えたのは、この数年間が初めてだったかもしれない。小学生の頃までは、親の言う通りに親の決めた美容院で親の決めたタイミングで親の希望の髪型にしてた。自分に特に希望もなかったから従ってたけど、いつもベリーショートにされて悲しくなってた記憶がある。

中学生からは、その反動で絶対に髪を切りたくなくなった。自分に自信もなくて、隠れるために、ロングヘアーで重たい前髪でずっと過ごしてた。それから彼氏にもっと好きになってもらいたくてショートにして…。全然自分がなかった。

自分の生きてる価値を見つけたくて伸ばし始めてからのこの数年間、髪型の変化とともに自分自身を取り戻してた。これからも、髪を大切に、自分のことを大切に、自分の価値を見出す旅を続けようと思う。