あなたは、好きな人に、どれくらい「好き」と言っていますか?
あなたの好きな人は、どれくらい「好き」と言ってくれますか?
あなたは、どんな時に「好き」と言っていますか?
愛が深まれば深まるほど、
その愛を言葉や物で示す必要はなくなる気がしませんか?

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「好き」という言葉は、たった2音で、簡単に言えてしまうけれど、気持ちが冷めてしまった相手には、言えなくなる。だけれど、騙そうと思った相手には言える、本当に大好きな相手にも言える、「好き」は、そんな不思議な言葉だから。

考えてみてほしい。「好き」という言葉の意味を。
「好き」と言う回数と、気持ちの強さは必ずしも比例しないことを。
100万回「好き」と言われても、心は満たされないことを。

今の私には、恋人がいる。
だけれど、彼に「好き」という回数は、歴代彼氏で一番少ない。
私は毎日「好きだよ」と言ってくれる人が好きだったし、毎日「好きだよ」と言ってくれることが当時は自慢だった。

そんな私が毎日「好きだよ」と言われなくても、不安を感じることはなく、幸せを感じるようになった。「好き」とは言わないけれど、毎日「おはよう」「今から帰るね」「お疲れ様」「ただいま」「おかえり」と、まるで一緒に住んでいるかのように、些細な挨拶をしている私たち。

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ルールとして決めたわけではないけれど、付き合う前から、なぜか「おはよう」と「おやすみ」を言い合うような不思議な仲だった。ベッドに寝っ転がったら、「おふとん」とLINEを送る。そうすると、ぎゅーっと抱きつく2匹のペンギンのスタンプが返ってくる。

このペンギンのスタンプはお揃いで持っている。
私は彼が言う「いい夢見てね」が英語のsweet dreamsのようで、
実はロマンチックな彼の一面に心惹かれた。

浴衣を着て、車で出かけた日。

「今まで付き合った人、一番長くてどれくらい?」と聞く私に、「半年かなぁ」と答える彼。
「なるほど、私が最長記録更新中なんだ」と、今さら知る。
そんな私は、過去最長で3年間付き合った人がいた。
ただ、どんなに長く付き合っていても、「もう別れることはない」と思っても、案外あっけなく終わりが来ることがある。

「浮気とか心配したことある?」という私の質問に、右折タイミングを伺いながら、「ないなぁ~」と答える彼。

「なんで?」
「なんとなく。疑ったことないなぁ、信頼してるから」

「好き」と伝えなくても、お互いがお互いにとって大切な人だと、心で分かっているから、気持ちが冷めてしまったと心配になったことはない。お互いがお互いにとって大切だと示すのは、ささやかな毎日の挨拶なのだと思う。

ふとした瞬間に送り合う、抱き合う2匹のペンギンスタンプのおかげなのかもしれない。

「この人は私のことを想ってくれている」
この感覚が、人の心をほわほわと温かく感じさせ、愛されていると思わせるのだと思う。

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面と向かって会う日にさえ、「好きだよ」と一度も言わない日もある。
なんだか冷めきった夫婦のように思えてくるけれど、
私たちは、お互いが大好きなんだと思う。

あの夏の日、彼が撮ってくれた浴衣姿の私。

その笑顔は、作り笑顔や決め顔ではなく、心から笑っている笑顔だった。
ふとした瞬間に、スマホの中にある写真フォルダを開き、
「ふふ」と微笑みながら、今までの写真を見返してしまう。
浴衣姿の彼はかっこいいなぁなんて。

つい最近前、恋人との写真が入ったフォルダの名前は、「新たな一歩」だった。
浮気されて、二股をかけられて、傷心だった私がまた新たな一歩を踏み出したのが、今の恋人だったから。何か理由があったわけではないけれど、

最近その写真フォルダの名前を「大事なひと」にした。
100万回の「好き」よりも、100万回の「いい夢見てね」が心を温かくしてくれるから。