SNSでインフルエンサーをしている全く知らない人に憧れて、自分もSNS上で人気者になりたいと思ったことがある。
私は文房具が好きなため、文房具好きの人とつながりたいと思い、実際に文房具に関連する投稿をするためのアカウントを作成してみた。

購入した文房具を、定期的にアップロードしようとアカウント作成当時は思っていたのだが、仕事が忙しくなると頻繁に投稿することは私には難しかった。
仕事が佳境の時期には、投稿はおろかアプリを開くことさえ億劫になった。

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インフルエンサーは、常に新しいネタを見つけなければならないし、コメントにもきちんと対応している。
自分の趣味嗜好だけで投稿しているかというとそうではない。フォロワーのニーズやリクエストに応じた投稿もしている。
人気に繋がる投稿をするためには、経済力はもちろんのこと、どんなに忙しくても定期的に投稿をするという継続力と精神力も必要だと改めて思った。

文房具以外にも、引っ越しをする際にインテリアの参考にさせてもらったアカウントや、同世代のOLの節約術を勉強させてもらっているアカウントがある。
SNSはキラキラした側面だけ見せる場であると考えていたが、俗に言う丁寧な暮らしをしている人のアカウントは、生活の全てをさらけ出しているように見えて、「実際の生活はそんなことないんでしょう」とは思わなかった。

そのため、丁寧な暮らしをしている人のアカウントは、私が今叶えられていない夢を私の代わりに叶えているものだと考えるようになった。
きれいに片付けられ、そうじの行き届いた明るい部屋で暮らしている。
白で統一されたインテリアに囲まれた暮らしをしている。
定時帰りで、職場と家が近く、毎日夜ごはんを手作りしている。

これらは私が実際の生活で実現させたいが、できていないことである。
今すぐに生活に取り入れられないため、ファンタジー映画のようなエンタメの一つとして楽しんでいる。

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久しぶりに大学生の時に使っていたアカウントを覗いた。
二人目の子供を抱っこしている同級生の写真が一番最初の投稿に出てきた。
確かこの前まで子供は一人だったはずだ。
私が SNSを見る暇もないくらい仕事だけに忙しくしている間に、彼女は二人のお母さんになっていた。

これまでに彼女が投稿した写真についても、つい気になって見てみた。すると、子育てに関する話題の他にも、大学生の時からの趣味であるカフェ巡りも変わらず続けている様子が窺えた。
彼女の投稿には、夫が子供の面倒を見てくれているので、カフェ巡りができていると、夫への感謝の言葉と共に綴られていた。
子供がいても自分の趣味を続けられる環境にある彼女を、そして子育てに協力的な素敵な旦那さんを持っている彼女を羨ましく思った。

世の中には夫が子育てに非協力的であるため、ワンオペ育児が辛いといった内容の投稿が目立つ。
それに相反する幸せいっぱいの彼女の投稿は、インフルエンサーではなく、身近な同級生の言葉であるためリアリティがあり、エンタメとして受け入れるにはまだ時間がかかりそうだと思った。