いろんな夢を持っていたけれど、叶ったり叶わなかったり、さまざまだった。
そんな中で、私の人生を180度変えた夢がある。それは私の夢では無かった。
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27歳の頃、私は約2年付き合った元カレとお別れをしてズタボロだった。
同棲しようと言っていたのに、騙されていたのだ。その人は、別居して1人暮らしはしていたが、籍が抜けていない疑惑だったし、子供が2人も居た。年齢も6つもごまかされていた。そりゃ頭が薄いのも納得だ。
今となってはどこが良かったのかもわからない。でもあの頃は本当に好きで、実家にも連れて行き、家族にも紹介していた。
おかげさまで、結婚に夢も希望もわかなかった。
とある晴天のあっつい土曜日。元カレと別れたあの日。会社の人たちとの食事会の約束があった。
行くかどうか迷ってるうちに時間になってしまい、とりあえず集合場所に向かうことにした。
合流したら、もちろんみんなはいつも通りで、なんかホッとして、まぁいっか、1人だとご飯食べる気も失せるしなぁと思い、そのまま食事会に参加した。
食事後、同じ寮メンバーで、1人の部屋に行き、ゲームではしゃいで、夜更かしをした。
そのうちの1人が今の旦那様である。
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彼は、お付き合いしてすぐの頃から「僕はすぐにでも結婚したいですよ」と熱烈アピール。
でも私には結婚というもの自体が想像できなかった。元カレと別れたあの時、結婚するという夢を置いてきた。
当時28歳の私は、30歳になったら、仕事を辞めて生まれ故郷に帰るか、1人用マンションを買おう、と考えていたのだ。
ただその後もお付き合いは順調で、半年が過ぎた頃、初めて宿泊旅行に出かけた。
この時、初めての旅行なのに、生理と被ってしまうかもしれない、と思った私は、事前に伝えておいた。
いざ、当日。
彼の荷物がやたら多いなと思ったら、半分以上が私用の荷物だった。
ネットで調べて、生理の時に役立つ色んなグッズを買って持ってきてくれていた。
私は思わず笑いながらつっこんでしまった。
「自分の荷物全然入ってないやん!」
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彼と過ごす旅行は居心地が良く、この人とだったら一生一緒に居られる、と感じた。
思ったが吉日、彼に伝えていた。
「結婚しても良いよ」
なんとも上から目線な私なりのぶきっちょな伝え方である。
でもこの一言で、彼がすぐ動いた。
旅行から帰って1ヶ月も経たないうちに正式にプロポーズしてくれて、半年後には結婚。
さらに半年過ぎた最近、新しい命を授かった。
でも実は、私には結婚の夢どころか子供が欲しい夢もなかった。私は、自分が子育てなんて怖い、と感じていて、子供が欲しいと思えずにいたのだ。旦那様にもその話しはしていた。
それでも旦那様と話し合っていくうちに旦那様の夢は、「結婚して子供を授かって、楽しい家族を作ること」なんだと分かった。
一緒に過ごすうちに、この人となら育てられるかもしれないと、また私の直感が働いた。
でも正直に言うと、そんなにすぐ出来るとは思っていなかった。私は病気療養中の身で、薬も飲んでいる。難しいことは分かっていた。でも何故だかすぐ出来た。
旦那様は、ほがらかに「ほらね、心配しすぎ」と笑うのだ。
こうして、私の夢ではなく、旦那様の夢で私の人生は180度変わった。
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つわりが酷くて、ご飯どころか水すらほぼ飲めずに点滴を受けたり、栄養注射をしていた時は、申し訳ないけど大後悔をした。ただひたすら寝てるだけで、家事も何もできない私。
そんな中、仕事が佳境で毎日残業続きの旦那様は、毎日「今日もよくがんばりました。1日お疲れ様。病気療養してた時よりマシだよ」と私に声をかけるのだ。
単純な私は、しょうがない、明日も戦うぞ。お腹の子を守るぞ、と思うのだった。でも次の日にはまた弱気にはなるのだけれど。
つわりを乗り越えかけてきた今、この想像もしていなかった人生で良かったと、やっと思えてきた。
5月に書いたエッセイの夢は遠ざかった。
でもあの時、中学生の私に伝えたいと思った夢、「思い描いていた人生とは全く違うけれど、後悔してないよ」は事実だ。
後悔した瞬間はもちろんあったけど、私はもう後悔していない。
旦那様の夢が私の夢にもなった愛しき私の人生だ。
「授かった命に感謝して、旦那様と笑い合える家庭を築く」