度々エッセイで、19歳の時に私の父が亡くなった話をしている。
突然後ろ盾を失い、絶望感の淵に立っていた私。
その時にたった1枚の画像が私を人間不信に陥れた、忘れもしない大学時代の「SNS事件簿」を紹介しようと思う。
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大学で私が入っていたサークルは出来立てほやほや。
たまたま私の経験を活かしてサークルの礎を創れることが多く、ひと学年上である代表の女の先輩と対面で話し合ったり、時にはLINEでやり取りをしていた。
その先輩の家族構成とうちの家族構成が似ていたり、先輩の妹さんと私の誕生日が偶然にも同じ日だったりと、なんだか「ご縁」を感じてくれたのか、良くしてもらっていた。
父が亡くなってすぐの時も「葬式やその後の手続きがあるので、冬季休暇期間のサークルを休む」という旨は先輩に誰よりも先に報告したのだった。
とても気にかけてくれるLINEをくれていたその代表。
しかし、私の父が亡くなって1週間ほど経ったある日、LINEのタイムラインにあり得ない画像が流れてきた。
それは、その先輩のお父さん・お母さん・先輩・妹さんの4人で撮った家族写真をLINEのホーム画面に設定したらしく、その画像が流れてきたのだ。
父の7回忌を迎えてあの頃より冷静になれる今、改めて考えてみても、私の事情を知っているのにも関わらず、家族写真をホーム画面に設定するのはいくらなんでもタイミングが悪すぎる。
あんなに親身なLINEをくれていたのにと、裏切られた気分になった。
常夏の国で仲睦まじく映るあの家族写真に、抑えきれない憤りを感じたのを今でも覚えている。
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父の死亡届や、父名義で契約していたインターネット接続の名義変更など、母だけでは混乱するので19歳ながら手続きを手伝い、1ヶ月ぶりにようやく関東に戻って久しぶりの大学でのサークル。
涙目で部室に来た私を見るなり、駆け寄り抱きしめてきた先輩の周りにいた他の先輩達や同期、後輩達は状況を読めずに口をポカンと開けていたあの光景も忘れはしない。
きっと先輩は「なぜ私が冬季休暇期間のサークルを休んだのか」他の部員に言っていなかったのだろう。
家族写真をホーム画面に設定したあの事件以来、その代表に対する信頼はなくなってしまった。
かたや当時高校生だった妹は、父を亡くしたことを周りの同級生が気にかけてくれたり、我が事のように一緒に泣いてくれたと、過去を振り返っていた。
たったひとつの悪気のない言動や行動から、他人のやることなすことに不信感しか持てなくなってしまった。
これが私を人間不信にしてしまった「SNS事件簿」のひとつである。
あなたの投稿は「いいね」と思ってほしいのか、「いいな」と思ってほしいのか。
一回してしまった投稿は形としては取り消せても、記憶からは一生消せないのだ。
自分自身にも言い聞かせながら、今一度投稿するモノやタイミングを考えて、SNSを使っていきたいものだ。