私は北海道岩見沢市というところにある大学に通っていた。
道外の人は岩見沢市といわれてもピンとこないだろう。道内の人も、あまり縁が無いという人が多いのではないだろうか。

岩見沢市は、地味な都市だ。都会とは決して言えない。

それでいて、美瑛町のような雄大な自然が広がっている、というわけでもない。札幌からは意外と近くて、JRなら普通列車でも40分程度で行くことができる。が、どこかに行こうとすると、JRの駅からはだいぶ遠い。大学も、駅から徒歩30分の場所にあった。

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大学が岩見沢だった、と言うと、大抵の人に言われる言葉がある。「雪大変だったでしょう」だ。

岩見沢市では毎年、大量に雪が降る。そのせいで、冬は頻繁にJRが止まったり、遅れたりする。JRだけならまだ良いが、高速バスにまで影響することもある。そうなるともう、大学に行く術は何も無くなってしまう。

ちなみに、市内では毎年、「ドカ雪祭り」というお祭りが冬に開かれている。たくさん雪が降ることにちなんだ祭りだ。雪像やスノーモービル、雪の巨大すべり台なんかが楽しめるのだが、なんとこの祭り、雪が降り過ぎて中止になったことがある。「ドカ雪祭り」なのに、だ。完全に天候のせいだから誰が悪いということではないが、なんとも間抜けな話である。


そんな岩見沢市だから、卒業してからはまだ一度も訪れたことがない。そもそも、行く用事があまり無いのだ。
遊園地が1つあるが、北海道内でいうと、もっと豪華な遊園地が他にある。そこと比べると、ちょっと、全体的にパワーが不足している感じなのだ。アトラクションの数も少ないし、規模が小さい。ヒーローショーとかがよく開催されているから、子ども連れの人は行こうと思うかもしれないけれど、独身の20代の女からすると、あまり惹かれない。
夏には大きめの音楽フェスが開催される。このフェスは有名な人たちも結構来るので、音楽好きな人からしたら行く価値はあると思う。実際、このフェスが開かれる2日間は、市外からもたくさん人が来る。ここは本当に岩見沢なのか?と疑ってしまうほどに賑わうのだ。しかし、私はそこまで音楽に詳しくいので、卒業してから行くことはなかった。

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が、今年の秋。約1年半ぶりに岩見沢を訪れることになった。大学時代の友人3人と、岩見沢にあるログホテルに泊まる予定を立てているのだ。在学中、うっすらと憧れを抱いてはいたが、値段設定が高めで泊まれなかったホテルだ。社会人になって2年目になったということで、思い切って泊まってみようということになった。現在道外で働いている友人も来てくれる。
まず、友人たちと久しぶりに一緒に泊まれるということが、とても楽しみ。そして案外、再び岩見沢を訪れることも、楽しみだ。
4年間、いや、コロナで通っていなかった期間があるから、正確には3年間ちょっとくらい。お世話になった街だ。不便だったけれど、寒かったけれど、なんだかんだ愛着がある。駅前にあった美唄焼き鳥が美味しい居酒屋、晴れた日に訪れたバラ園、元彼の家のすぐそばにあった魚介醤油スープが美味しいラーメン屋。派手ではないけれど、良い思い出がたくさんある。

散々悪態ついてごめんなさい。全部本音ではあるけれど、愛ゆえのものであることも分かってね。秋に行くから、出来れば晴れにしてくれると嬉しいな。こんなに好き勝手言ったら無理かな。でも、もし雨だったとしても、きっと楽しいだろうなって思う。