今から4年前の2019年8月。
半年後にはコロナがブレイクするとは誰も想像しておらず、当たり前の日常を過ごしていた。
写真フォルダを見ると、当時担当していた店舗の出張写真が多く残っており、仕事に没頭していた様子が伝わる。
そうだった。
20代後半に足を踏み入れて、この先の人生プランを真剣に悩み始めていた頃だったと思い出した。

そして現在の2023年8月。
長く終わりの見えなかったブレイクも目には見えなくなってきた。
そして私はこの夏で一つの区切りを迎えることになる。
そう、20代とのお別れだ。
次の4年間を想像してみたい。

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きっとコロナの記憶はどんどん遠ざかり、また海を渡るハードルが下がっていくのだろう。
大学を卒業して、就職して、転職して、退職して、再度学問の世界へ入って、バイト生活になった20代。
とにかく今は経験だ、と留まるよりも挑戦することに重を置いていた生活も見直すときになった。
そしてついにあの音が聞こえてくるのかもしれない。
バイオロジカル・クロック、体内時計。高齢出産にあたる35歳が見えてきたことで意識される妊娠出産のタイムリミット。
私は母親になることを選ぶのだろうか。

2019年からの4年間で、一体友人の何人が母親になったのかざっと考えると、両手では数えきれないことに気がついた。
私は4年間の変化と問われたら、直ぐにプレコロナとポストコロナだと想像したが、きっと彼女たちは妊娠・出産を思い浮かべるのだろう。
そして私と彼女たちに聞こえるバイオロジカル・クロックの音量は違うのだろう。
どうしてここまで経験至上主義で、恋愛やキャリアよりも自分の生き甲斐探しを優先し、もはやジェンダー研究をしている身であるのにその時計の存在を気にしているのだろう。
虚しいほどの矛盾。

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子どもの出産を社会学では「再生産」と呼ぶことがある。
これは人口の再生産という意味で、純粋に子どもを出産するということは人口が増えるということ。
でもこの時代で親になる人は、誰も人口を維持するために子どもを作ろうとは考えていないだろう。
では、なんのために、何を理由に子どもをつくろうと思うのか。
そもそもこの質問に答えられる親はいるのだろうか。
「いい年齢なんだし子どもをつくるのが当たり前でしょ」と答えるのだろうか。

ここからの4年間を考えると、今までの4年間より苦しいものになる予感がしている。
この問いの答えを見つけられるのか不安なのが本音だ。
私はチクタクチクタクと聞こえる音とどう向き合うのだろうか。
平成5年生まれ、令和5年でも母親になる答えを探している。
そして少しもプレッシャーがないとは言えない。
この音が聞こえなくなる世代はいつなのだろう。そんな世代はこれからも存在しないのだろうか。