高校3年生の頃、初めて他校の同級生に片思いをしていた。
趣味繋がりで知り合い、いろんな相談をしているうちに同い年ながら、懐が広くて、どんな思いも受け止めてくれるその優しさが大好きだった。たくさんメールをして電話をして、彼に会える時間があればどこへでも行って、とにかくたくさん会って話をしてきた。

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よく言う“いい感じ”の状態が何カ月も続いていて、何度も「好き」という言葉は伝えていたが、なぜか彼は確実な返事を出さず濁していた。それは、わたしは受験生で、彼は就職が決まっていて、卒業した後の生活が全く異なることと、そもそも受験で気持ちに浮き沈みが起きやすかった時期でもあったため、その時期に答えを出して気持ちを揺さぶってしまうことが嫌だと言われていた。それはつまり振ることを暗に示していたのに、当時大好きでたまらなかった私はそんなことも考えず、気を使ってくれる優しさにさらに惚れ込んでしまっていた。

勉強して受験が上手くいけば、とにかく好きと伝え続ければ、何をしたら彼に同じように好きと言ってもらえるだろう、そればかり考えて辿り着いた結果、私は髪を切ることにした。
当時彼に出会ったのは、アイドルの現場だった。同じ推しメンが好きで、その子は黒髪のショートヘアだった。そして、彼いわくこれまで付き合ってきた子もショートヘアばかりで、長いよりも断然ショートが好みだと言い切っていた。彼が好きな髪形になれれば、少しは気に入ってくれるかもしれない。本当に必死で大好きで、18年ずっと似合わないと思い込んでしたことないショートヘアだったけど、彼への気持ちひとつで心を決めて、ばっさりと切った。

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周りの友達からは、失恋して髪を切ったのだと思って心配されたが、わたしにとってはこの恋を成就させたい覚悟の表れだった。髪を切ったことは彼には秘密にしたまま、いつものように会いに行った。彼は驚いていたのと、自分のために髪を切ってくれた子は初めてだったようで喜んでくれて、何度も似合うねと言ってくれた。あとは大学受験さえうまくいけば、その時が来たら好きと言ってくれれば、その思い一つだった。

出会ってから8か月後、大学には無事合格して、その時はやってきた。
再び、彼に好意を伝え、気持ちを確認したが、「好きだけど、進路が違えば生活も全く違ってしまう。働く大変さと、勉強はしつつも楽しい大学生活を送る中で、一緒にいられるのかがわからない」またしてもはっきりとした答えはなく、好きなのか振られたのかよくわからない返答だった。

そして、さらに2か月後大きな出来事が起きた。
知り合いに、彼に彼女ができたことを知らされたのだった。

それは、彼が就職した後のことで、就職先で出会った子だった。彼の一目惚れで、しかもショートヘアではないロングヘアの女の子。髪を切ったら、彼の好きな見た目に近づけば、受験が終わったら、やっと大好きな彼ともっと楽しい日々が待っていると思っていた。結果的には失恋をして髪を切ったことと同じになってしまい、私はこの時以降ショートヘアにしたことは未だに無い。

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好きな人に振り向いてほしくて、好きな人の好きな髪形や服装にしてみたり、素直な恋心で頑張ってみても、結局は彼本人が決めることで、それは見た目だけじゃなくて、境遇、タイプ、この先のことを考えてなど、心惹かれることや付き合うには至らないことを思い知った。

でもどういう反応してくれるかな、びっくりしてくれるかなと、好きな人のことを思いながら髪を切る時は、振られるなんて関係なく、ドキドキしつつ本当にわくわくした新鮮な気持ちだった。新しい自分になって彼に好きになってもらいたい、ただそれだけだった。

ここまで自分を変えてまで好きだったのは、今でも彼だけで、ずっと忘れられない思い出の人である。