小さい頃。
といっても、私自身も正直言ってしまえば、覚えていないくらいずっと昔からの話。

海も空も大好きな私にとっての旅といえば、車で3時間

千葉の海と聞いて、どこを思い浮かべるだろう。
九十九里、鋸南、富津、木更津、勝浦などさまざまな場所があって、それぞれに素敵な表情をもっている。

私の名前に、凪の字が使われているせいもあるのかな、なんて考えてみたり。
そのくらいに旅も好きだし、海も空も大好き。
旅と聞いたら、距離が遠い場所ばかり思いつくけど車で3時間。
海ほたると山道を越えたら着く。

小学生の頃までは、毎年欠かさず行っていた民宿。
お盆はいつもここで過ごしてた。
こういうところのご飯が意外と美味しかったり、行く度に「あ、懐かしい。そうそう、この味」って。

中学生に上がると、テニスの試合と重なってしまって行けないこともあったな。
高校の時は試合が終わったその足で、1人で行ったこともある。
初めて乗る電車に少し緊張したり、持っていたスマホで電車は調べることはできても、その電車で本当に合っているのか不安で仕方なくて、駅員さんに聞いたり。
だけど、好きな音楽を聴きながら見える眺めは、いつも車から見ていた高速道路と山道、街並みはどこにもなくて。
電車は線路の上しか走らないけど、都会に住んでいたらきっと見ることのできない、夕日の光が海に反射して、まるでこっちにおいでって呼んでいるような光の道。
普段乗らないような電車に乗るのも、旅の醍醐味なのかな。
民宿に一番近い駅で降りて父の運転する車に乗り、15分も走ればいつもの慣れた民宿に着く。

やっぱり夏はこうじゃなきゃ。鮮明に思い出せるあの景色

やっぱり夏はこうじゃなきゃ。
大人になった今でも、あの景色をすごく鮮明に思い出せる。
大好きな場所から見える地平線、空と海の境界線が分からないくらい。
小高い丘の上から見るのも好きだけど、岩の上を歩いて、その岩の先っちょに座って見る景色が今でもずっと好き。

夏休みだから早起きなんてしなくてもいいのに、そういう時に限って、いつも起きる時間よりも少しだけ早く起きて、夏なのに日が昇る前の、夏が夏を纏っていない少しだけ暗い中を歩いたのも、防波堤の上に座ったのもいい思い出。

あ、そうそう。この景色だよっていう場所も必要だと私は思う。
毎年みんなでバーベキューをして、焼きそばとか、お肉焼けたよーの声に群がる子どもたち。
子どもの頃はとにかく体力任せにずっと海の中にいて、親に飲み物飲みなさいって言われるくらいずっと海の中で友達と遊んでたことなんかもあったな。

自分に帰ることのできる唯一の景色だけは、永遠に大切にしたい

わたしに旅が必要な理由。
今は民宿はなくなってしまったけど、やっぱりあの景色だけは何年経とうと、どれだけ時が経ったとしてもどうしても忘れられない。
忘れたくないってずっと思ってる。

子どもの頃は、いつか絶対にあの地平線の向こうまで行くんだって思ってた。
だけど大人になった今は、地平線には続きがあるんだってことが分かったから。
もしも忘れてしまった時が来たら、またあの岩の先まで歩いて、子どもだった頃に帰りたい。
自分が一番自分に帰れる場所の、その1つ1つを永遠に大事にしていたい。
いつかなくなるのかなって思うと、少しだけ怖いなって思うけど、海が好きな理由も空が好きな理由も、昔から変わっていなくて。
今まで見てきた景色もきっとこれからも好きなんだろう。

だけど、これまでの過去とこれから先の未来を、ずっと自分なりにかもしれないけど、遥か彼方まで、永遠に続く来し方を重ねていたい。
ずっと自分の中で、大切にしていたい景色ももちろんあるけれど、これから先、どんな旅が待っているんだろうと思うとワクワクする。
ただあの地平線を見る度に、思ってたことを思い出すようにして。
そんな巡り合わせにまたいつか出逢いにいきたい。