私は普段からお酒をほとんど飲まないタイプだ。お酒に酔うという感覚はさっぱり分からないし、お酒の味が美味しいともよく分からない。飲むと胃がつんと痛くなってしまう。誘われた飲み会があっても、お酒を楽しく飲めない私は嫌だなと思ってしまう。
大学時代にずっと好きだった先輩がいたのだが、報われずに、失恋をし、友人を誘ってやけ酒と称してお酒を飲みまくったことがある。お酒を飲んでいても憂鬱な気持ちは晴れることがなかった。むしろどんどん暗い気持ちになっていったと思う。帰り道に駅のホームへ思いっきり吐いてしまったのは苦い思い出だ。
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そんな経験から、お酒は飲める機会があってももうあまり飲みたくないと思っていた。またお酒を飲むようになったきっかけは好きな人がお酒を好きだからだ。自分も少しぐらいは飲めないといけないだろうなと思った。好きな人に気に入ってもらうにはお酒を飲める女になるのが第一条件だと思った。
今度飲みに行ってみたいです!と元気よく言うと、好きな人は今度行こうと言ってくれて誘ってくれたのでとてもとても幸せだった。好きな人は、酒豪で本当にたくさん飲む人だった。酒を飲むと人が変わると言われていて、部長の頭を叩いてしまったこともあるらしい。
サシ飲みに何回か行ける仲となれた。
緊張したけど、楽しく話すことができたし、職場で悩んでいることを相談できた。お酒をもっと飲めと強要されることはなかった。無理しなくていいと気遣ってくれた。
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好きな人はバツイチだというウワサを聞いたことがある。今付き合っている女性がいるのかは分からない。自分からは恋愛の話をふることができない。好きな人は最近、職位が上がったようで帰りも遅くプレッシャーもあるようで忙しそうだった。
サシ飲みの帰り道、二人でカラオケに行った。カラオケでは恋愛ソングをたくさん歌った。二人でデュエットをしたりしてとても楽しかった。時折お酒を飲みすぎじゃないのかなと思った。並んで歩くと、肩が少し触れてドキドキした。
カラオケの部屋を出る前に目をじっと見つめられて頭を撫でられた。多分お酒を飲まなかったら決して言わないだろう秘密も教えてもらった。帰り道に手を繋がれた。自然な流れで、私は拒むことはなく、優しく繋がれた手を離すことは出来なかった。繋いだ手はとても暖かく、わたしたちは生きているんだとお互いの存在を感じて、いろんな意味を考えて涙が出そうだった。
好きな人が、お酒をこんなに沢山飲み続ける理由はなんだろう。悩んでいることがたくさんあるんじゃないか。健康が心配になる。こんなに沢山飲んだら、早く死んでしまうのではないかと思う。お酒を飲むとお金がかかるし、健康を害して動けなくなったら何かいいことがあるのだろうか。
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多分お酒を飲んでいたという理由で、あの日のことはなかったことになるのだろう。私もあのことは夢のような気がするのだ。顔を合わせたら何もなかった顔をする。また新しい1日が始まる。