お酒が好きかと言われたら、嫌いではないと答える。お酒を飲むこと自体は嫌いではない。お酒の席の雰囲気はむしろ好きだ。一緒に飲んでいる人の、普段見られない一面を見るのはもっと好きだ。単純におもしろい。私は飲んでもそこまで酔う方ではないので、顔を真っ赤にしながら「○○さんだと距離がある気がするから、明日から△△って呼ぶから」などと言っている人を楽しく見ている。たいてい、次の日になるとスンとして、△△とは決して呼んでくれないのだが。

◎　　　　　　　　　　◎

飲み会には行くし、行けば飲むのだが、何もない日に自分から進んで飲むことはない。よほど疲れているか、強いお酒を連続で飲むかしないとそんなに酔えないので、飲んでも飲まなくてもあまり変わらない気がしている。

それに、単純に好みの問題で、飲めるお酒がかなり少ない。炭酸も、苦い飲み物も好きではないので、飲むのはカクテル系とワイン、たまに勢いでサワーを頼むくらいだ。そんな感じだから、体にもお財布にも優しいノンアルでいいだろうという考えだ。

今はそんな風に落ち着いているが、一度だけ、場の勢いと自分の負けず嫌い精神が相まって、限界まで飲んで吐いたこともある。飲みすぎて吐くなんて自分には無縁だと思っていたので、ちょっと驚いていた。

◎　　　　　　　　　　◎

大学３年生のとき、留学先の日本人バレーボールチームに参加していた。海外駐在で来ているサラリーマンや駐妻さんに混ざり、練習や試合に出て、終わった後はみんなでご飯を食べながら飲むということをしていた。

海外在住に来ている人と、それについてくる決心をして配偶者を支えている人、そしてスポーツ好き。ガッツがある人たちなのは間違いない。私の所属しているチームのメンバーはみな明朗快活な良い人たちだったし、予想を裏切らず体育会系だった。特に飲みの席では体育会系のノリは存在すると思うし、その洗礼を受けたのはこのチームでだった。

みんなで大会に出た後の打ち上げの席。男女それぞれでの出場だったが、打ち上げはもちろん一緒に。女子チームには私の他にもう１人学生がいて、私たちは若いから、学生だからということもあり格好のターゲットだった。周りの名誉のために言っておくが、別に強制されたわけではない。その場のノリに乗ったのは自分だし、私の負けず嫌い精神が謎のタイミングで発揮されただけなのだ。

◎　　　　　　　　　　◎

私たちは煽られて、レモンサワーを飲みまくっていた。もう１人は私よりも体格がよく、明るく元気！な感じの子で、お酒も相当強かった。彼女が飲みまくり、いいね～と言われているのを見て、まだいけるし、対抗しようと思ってしまったのだ。

そんなことを考えている時点でもう冷静ではないが、当時２１歳の私はまだ自分の限界を知らず、飛ばしまくってしまった。この時は、お酒に限らず彼女に負けたくないというか、羨んでいる部分が多々あった。だからこそ、勢いで対抗したくなってしまった。

突然限界がきて、トイレに駆け込み思いっきり吐いてしまった。皮肉にも、その時心配して一緒にいてくれたのは私が勝手に張り合っていた当の彼女だ。さすがに素面ではなかったと思うが、でもまだ余裕がありそうだった。１人芝居だったし、完敗だ。周りの大人たちももちろん心配はしてくれたものの、みんなが通る道だと言って笑っていた。さすがだ。

今思えば、確かに一度くらい必要な経験だったとは思う。大学在学中は、調子に乗って飲みまくり、気持ち悪くて動けなくなることはその後も何度かあった。吐いたのは一度きりだったが、もうそんな風になるまで酔いたいとはあまり思わない。酔っている人を楽しく見ているくらいで十分だ。