「美しく水着を着たい」
そう思ったきっかけは、友人とプールへ行く約束をしたこと。
しかも、ナイトプール。
私にとって、パリピの溜まり場のようなイメージしかない。
「楽しみだな」という気持ちよりも、ビビり感の方が圧倒的に勝っている。

最初は、「夏らしいことをしたいね」という話をしていただけだった。
中学生以来、私は一度もプールへ行ったことがない。
そのことを話すと、「じゃあさ、プール行こうよ!」と友人がワクワクした様子で言ってきた。
さらに、「夜の方が紫外線が少なそうじゃない?」という友人の言葉で、ナイトプールに行くことが決まった。
美肌が命の私は、"紫外線が少ない"という理由に反応してしまい、ナイトプールに行くことを快諾してしまった。

◎          ◎

帰宅して、ふと冷静になって考えた。
水着姿を見られるのが恥ずかしい。
下着とは違うけれど、似たようなもの。
それを人様に見られるなんて。
どうせ、私のことなんて見る人はいないと思う。
でも、人間は比較したがる生き物。
自分より劣っていると、陰でコソコソと言う人もいる。
身体的なことではなくても、過去に悪口を言われた経験があるので、そういったことには人一倍過敏になってしまう。

毎朝、着替えるときに姿見に映る自分を見る。
その度に、「理想の私ではないな」と思ってしまう。
ちょっぴり寂しいバスト。
ぷっくりしている下っ腹。
むくんでいる脚。
他にも色々と、残念だなと感じた。
誰と比較したわけでもなく、なりたいと望んでいる姿とは程遠い。
自分らしさは人それぞれだし、私の体型を羨ましいと言ってくれる人もいる。
ただ、他者から見た自分と、私から見た自分は違う。
理想の姿になるために、私は筋トレを始めた。
ジムに行くのは苦手なので、家でできることをコツコツと頑張ることにした。

◎          ◎

足パカを30回しただけで、脚がプルプルと震える。
プランクをしてみても、20秒が限界。
自分の筋力と体幹のなさに、ショックを受けている。
「何でもっと早く鍛えなかったんだろう」と、すごく後悔している。
それでも、私は決して諦めない。
ちょっとした時間も無駄にしない。
早く目が覚めてしまったら、寝ながらできるウエスト痩せの筋トレ。
在宅ワークなのを良いことに、仕事中も肩こりやバストアップに効果的な筋トレ。
それから、エッセイの内容を考えているときでさえ、脚やせの筋トレをしている。

すぐ疲れてしまうことが多い。
正直、サボりたくなるときだってあった。
でも、私は時間を置いてからまた取り組む。
やると決めたメニューをきちんとこなす。
諦めが悪い部分は、きっと昨年亡くなった祖母に似たのかもしれない。

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2週間ほど経って、お腹周りが引き締まってきた。
脚もむくみが以前よりマシになった。
まだ少し変わったと感じる程度だけれど、努力すればきちんと効果が出るのだと実感した。
テレビやネットで見るような、ナイスバディになるのは難しいかもしれない。
それでも、水着が似合う身体になりたい。
周りから比較される対象にも、引き立て役にもなるつもりはない。

先日、ネットでちょっと可愛らしいデザインの水着を購入した。
今はもう手元にある。
私は本気だ。もう引き下がることはできない。
水着を堂々と着こなして、パリピに負けないくらいナイトプールを楽しむ。
最高の夏の思い出を作りたい。
私はこのたくらみを、きっと成功させてみせる。