私はこの4年間で蛙化現象を克服した。きっかけは婚活だった。
4年前、21歳大学生の時、私は初めての婚活パーティーに参加した。2歳年上の同郷だった男性とマッチングし、デートの約束をした。しかし約束の前日、どうにも胸の奥がざわざわしたのだ。それはやがて「行きたくない」に変わり、最終的には「どうやってキャンセルしようか」に変わった。

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困っていると、運良く (?) 相手男性から "他に好きな人ができた" と断りの連絡が入った。ショックなはずの状況だが、その時私はホッとしてしまったのだ。

しかし当時の私は "蛙化現象" という言葉を知らなかった。それなので、前向きに「切り替えて次探そう!」と、今度はマッチングアプリに登録した。そこでは1歳年上の社会人男性と交際した。優しくて、私のことをまっすぐに愛してくれた人だった。

誰もが思いつくような直球の告白をしてくれたのは人生で彼一人だけである。ただ、そんな完璧な彼氏であったはずなのに、私の心にはやはり「会いたくない」というモヤモヤが浮かんでしまった。電話をしているときは幸せだし大好きだと思うのに、いざデートの日が近づくと、気持ち悪くなる。

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こんなに自分を好きでいてくれる人なのに、私はおかしい、と気づいたのだ。周りの友達は彼氏と手をつないで幸せそうなのに、私は彼を見ても触れたいと思えなかったのだ。むしろ、触れてほしくないと思ったのだ。

そして知った "蛙化現象" の存在。 どうしよう、このままでは私は誰とも結婚できない。何とかして克服しようとインターネットで調べまくったものだ。しかしどうにもならず、やがて彼への罪悪感から自ら別れを告げた。

それから約1年。社会人になった私は、蛙化現象の不安もあったが、それよりも「早く結婚したい」という気持ちのほうが大きかったため結婚相談所に入会した。結婚相談所を選んだ理由は、蛙化現象について相談できる環境が欲しかったからだ。

「彼氏が気持ち悪い」なんて相談、当然身内や友人にはできない。蛙化現象に陥ってしまったらコンシェルジュに相談しようと、とりあえずは婚活に奮闘した。週2日の休日は、基本3名の男性とデートしていた。よく頑張ったものだ。しかし、不思議なことに、一度も「気持ち悪い」と思わなかったのだ。とんとん拍子に今の夫と出会い、真剣交際し、成婚退会した。

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夫には一度も嫌悪感を抱いたことがないし、手を繋ぎたいし、抱きしめてほしいと思う。なぜ、突如克服できたのか、と考えた。おそらく、「結婚するため」と割り切れたことと、これまでにはないくらいゆっくりと関係を築きあげられたことにあるのではないだろうか。

"恋愛" ではなく "結婚" のため。自分の現実を手に入れるため。あくまで私の感覚だが、結婚相談所はこれまでの婚活パーティーやマッチングアプリより本気度が高い。確実に誰もが "結婚" を見据えている。好きかどうかだけではなく、諸々のスペックも判断材料として互いを見ていた。その割り切りが、これまでの感覚とは違ったと思う。また、基本的に真剣交際を始めても、最初はお互い好きではない。私も夫もそうだった。しかし、これまでの「彼氏」は「彼氏だから好きなんだ」と自分に言い聞かせていたところがあった。

しかし、結婚相談所での出会いは「好きでない人と交際する」ことが公的に認められているのだ。良いか悪いかは別として、「この人は私を好きではない」と思ったら気が軽かった。「結婚するために交際している」と思ったら、楽だった。

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なんだかんだ毎週会っていたら、お互い好きになったが、案外人間はそうなのかもしれない。最初は何とも思っていなくても、選択肢が1つしかないと、同じ時間を長く過ごしていると、自然と好意を抱くのかもしれない。明確にいつ好きになったか覚えていないが、気付いたら好きで、気付いたら恋人としてのステップも乗り越えていた。すべてが気付いたら、の自然な流れだったのだ。

もしかしたらこれまでの人も、無理に恋人になろうとせず、「とりあえず友達で」と伝えていれば、案外普通に付き合えていたかもしれない。インターネットには「蛙化現象は自然に治った」という話がよく載っているが、まさにその通りなのである。意識していなくても、これまでと何か少し違う恋愛をすれば、自然と治るものだと思う。