私はお酒が好きだ。お酒は強くもないが、弱くもないと思っている。
だが実は、社会人になった今も自分の飲める限界はまだ知らない。

飲めば楽しい、酔えば面白い。だからたくさん飲みたい。
後先考えず自由に飲み歩いていた大学時代。

アルバイト先の大イベントを終えた夜、バイトメンバー全員の飲み会があった。
一次会を終え、行けるメンバーで2次会に行くことになった。

◎          ◎

正直、行くか行かないかはどちらでもよかったが、当時密かに好きだった人が2次会に行くと言うので私もついて行くことにした。

2次会というには遅い終電前の時間帯だったので適当に空いているチェーンの居酒屋へ入った。
1次会の時点で少しできあがっていた彼は、席に着くなり隣に座った女性社員さんを口説きだした。

「おいくつですか?26?僕21なんですけど大丈夫ですか?」
「この後どうしますか?ホテルとかいきますか?」
「ずっと好きだったんですよね」

みんなの前で1人喋っている彼。
普段は無口で真面目な青年で、女性経験がないことは周知の事実だったのでメンバーは驚きながらも「お前飲みすぎだよ!」などと突っ込んでいたが、私はあまりの衝撃に平静を装うことでいっぱいいっぱいだった。

◎          ◎

しばらくすると、翌日休めない実習があるから帰ると言い出した彼。
1人じゃ真っすぐ歩けないくらいに酔っぱらっていたので、いつものテンションで「一緒に駅まで連れていきます!」とだけ言い残して彼と駅へ向かった。

酔っているのを良いことに、彼と腕を組んで駅まで引きずって行った。
それだけでも胸が張り裂けそうなくらい緊張していたというのに、駅に着く前に、終電がなくなったとつぶやく彼。
本当ならそのまま2人でどこかへ行ってしまいたいところだったが、「でも明日欠席できない実習なんでしょ?帰らないと」そう自分と彼に言い聞かせた。

「始発で帰れば間に合うので先輩の家に泊めてもらえませんか?」
「それが無理なら適当にカラオケ入るか……」

「ただの先輩としか思われてないのかな」という寂しい気持ちと嬉しい気持ちが混ざり合って、すぐには答えられなかった。

「私も歩いてる間に終電なくなっちゃったから家は無理だよ」

酔った成人男性を引きずりながらだと思うように歩けなかったので、終電がなくなったのは本当だった。とはいえ、大好きだった人をこんな形で家に招くのもなんだか癪だった。

◎          ◎

ようやく駅の改札の前まで来た途端、彼は床で寝始めてしまった。
どうしたらいいものか困っていたところに2次会を終えて、お兄ちゃん的存在の先輩が駅へやってきた。

「お前らまだ帰ってなかったの?」
「床で寝るなよ。何してんの?女の子帰さず寝るなんて」
「さっさとタクシー乗るぞ!」

先輩はそう言い、手際よく私たちをタクシー乗り場まで連れて行った。
帰り道1人になってやっと、自分が失恋したのだと悟った。
その現実とタクシー代で失った日払いのバイト代6,000円が寒い冬の身に染みた。

「飲んでもいいけど呑まれるな」
よく言われるこの言葉を身をもって感じた日だった。
私が限界までお酒を飲む日は一生来ないだろう。