かがみすとのオフ会で出会った方やここでのストイックな生活について読んでくださっている方は驚くかと思うが、私は痩せていた時期が殆どない。身長158センチに対して体重は70キロ。そんな時期が6年ほど続いていた。

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転機は2016年。大学院生になったこの年、入院後のガイダンスで積極的に学会発表を行うよう言われたことだった。それ以前から大学院に行くと言うことは人前で発表する機会が増えることであることは伺っていたが、いざ現実となると考えは変わった。一杯勉強して、研究して発表しよう。多くの院生がそう心に胸を躍らされる中、私は一人、この大きく惨めな身体を抱えてこう思った。

「人前に出ると言うことは、この惨めな身体を人前にさらすと言うことである。今すぐ変わらなくては」

決心してからは早かった。これまで周囲に何度言われようと痩せようとしなかったが、いざ人前に立つとなると心が変わった。おまけに来年には教育実習も控えており、人前で授業をするとなると尚更だった。以前、世界仰天ニュースで太っている先生の所には生徒が寄りつかないと放映されており、私自身もなめられてしまうのではないかと思った。この頃は7号と9号しか展開されていないレディースのファッションブランドは殆ど入らなかった。きれいめフェミニンブランドの王道と言われているレッセパッセと、そのお姉さんブランドのデビュードフィオレバイレッセパッセに憧れるも、体型の問題で二方とも着ることができなかった。

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そこで私はこの二方のワンピースが着れるようになることを第一目標にダイエットを開始した。1日1000円まで食堂のものが食べられるコースに入っていたが、カレーやラーメンといったカロリーの高い物は極力避け、お昼はうどんや納豆、豆腐ハンバーグ等油を使用していない低カロリーの物を中心に食べるようにした。

今まで食べない日のなかったおやつは外出時のみとし、それ以外ではどうしても我慢できないPMS時に安いお菓子を買うだけだった。近くにスーパーがあったが買うのは日常品と乳製品だけで、PMS時にチョコパイを買った際には何ヶ月ぶりにスーパーでお菓子を買ったのだろうと思った。おかしのまちおかで安い物を大量購入してお得に満腹感を得ていた1年前とは大きな違いであった。

結果はみるみると現れ、ダイエットを開始して9ヶ月後の12月には11キロの減量に成功し、母親が最寄り駅まで迎えに来た際には「最初誰だか分からなかった」と言われるほどになった。異性からの視線にも変化があり、2015年には知り合いでしかなかった人に「めっちゃ痩せたよね、めっちゃかわいくなった」と言われて向こうの好意でそのまま交際することとなった。

その他にも、隣の研究室に所属する2人の異性や課外活動で初めて会った人に好意を抱かれたり、城田優似の元ジャニーズJr.の販売員にラインを聞かれるなどした。歳24にして初めてモテ期を経験し、痩せると変わるのだなぁとしみじみ実感した。

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そこで調子に乗った私は暫くは現状維持で良いとダイエットを辞めてしまい、それ以上痩せることはなかった。しかし、社会人2年目となった2022年に二度目の転機が訪れた。私は出生時に先天性股関節亜脱臼という病気を患い治療した経緯があるが、これを持っていた人は股関節にガタがきやすいという情報を偶然入手し、私も該当するのではないかと感じた。

実際アヒル座りは楽にできるがあぐらはかけない、骨盤を立てることができない、典型的な下半身太り等の骨盤がゆがんでいる兆候は大いにあり、念のために整形外科を受診し、骨盤と股関節のレントゲンを撮ってもらった。そこで分かったのは、骨格に異常はないが、筋肉が少ないのではないかということだった。診察後近くのスポーツジムに向かい、体組計に乗ると標準体重に対して体脂肪率が42%と典型的な隠れ肥満であることが分かった。気づけばこの5年間、考えるのはカロリーのみで栄養の摂れた食事など一切してこなかった。

元々のタンパク質嫌いに加え2021年はポテトデラックスにはまり、ご飯を抜いてまで1年間に50袋くらい購入していた。けれどもBMIはやや高い程度がいいことや元々中性脂肪が基準値以下でその分皮下脂肪がたまりやすいことを理由に、寧ろ私は健康的な身体をしているのではないかと思っていた。しかし隠れ肥満は別名サルコペニア肥満と呼ばれ、筋肉が少ないという意味で一般的な肥満よりも危険なことが分かった。急いで近場のヨガに申し込みをし、仕事帰りは週に4回以上通った。

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こうして1年と少しが経った現在であるが、元が元なだけにまだ隠れ肥満ではあるが、大分筋肉も付き、体脂肪率も7%、体重も5キロ減少させることができた。偏差値で例えるなら、30が45になったというところである。まだ伸びしろがある分辞めるつもりはないが、見た目も中身もずいぶんと変わってきた。足はまだまだ太いがウエストにくびれがつき、会う人会う人に「痩せたね」と言われるようになった。

本来基礎代謝が落ち痩せにくくなると言われる30代に突入した現在が一番きれいに痩せている時期である。実際周囲を見渡しながら堂々と歩けるようにもなってきた。数年前からは考えられない進歩である。

こんな大胆な変化を遂げた私だからこそ言いたい。

「美しいは、つくるものである」と。