台風の進路が刻一刻と東に西にずれることに怯えつつ、おもむろにフライパンを取り出す夏の土曜日17:30。バターではなくマーガリンをフライパンにひく私を見たら、母も恋人も嫌がるだろうと思いつつ(母は無類のバター・マーガリン嫌い、恋人はマーガリン嫌いで、私は節約重視で躊躇なくバターよりマーガリンを選んでしまう)、コーヒースプーン半分くらいのマーガリンをフライパンの端にこすりつけて落としたら、ここぞとばかりに夏場の暑さを利用し早めに溶けてもらう。
この時間に、お夕飯作りではなくホットケーキ。

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ここ一ヶ月、仕事は絶賛カオス期を迎えていた。
私がカオスにしているのか、周りがカオスにしているのか、それとも私がカオスと感じているだけなのか、真理はともかくとして。本当に怒髪天をつく怒りを経由して、疲れ果て、精根尽きていた。そもそも1ヶ月と言わず2ヶ月前から、慣れない海外担当業務に波の如く心が上がったり下がったり、感情のバランスが取れずにいたのは確か。
それでもせっかく与えてもらった機会だしと思って、喜怒哀楽が激しい自分自身をなんとか乗りこなしてきたけれど、今回のとあるブチギレ事案を発端に、心がしゅんとしてしまった。都度都度対処できていたと思っていたあらゆる方面への鬱憤がエンジン発射と言わんばかりに集結して、ドカーンとなった日の翌日、私は愛するモフモフお布団に立てこもった。
夏なのに、モフモフお布団。

好きなYoutubeを流し見し、アイスを食べ、流し見して内容が頭に入ってこなかったのでまた同じYoutubeを見て(投稿者さん、雑な見をしてしまってごめんなさい)、アイスを続けて2本食べ(一本32kcalの小さなカルピスアイスだということは釈明させてほしい)、好きなラジオを聞き、いつの間にか2時間寝て、友人と急遽電話をして話を聞いてもらい...というようなことをしていたら、いつのまにか夜になっていて、お風呂にも入らず眠った。
前述のとおり私は喜怒哀楽が激しいが、加えて飽き性でもあるので、一旦がつんと落ち込んで布団に立てこもったからといって長らくそれが続くことはない。翌日午後になると、もう何もできない...といった調子から少しづつ抜け出して、無意識にもぞもぞシャバに戻る準備を始める。私にとってそれが料理。15:00頃に季節外れのシチューを作り、早めのお夕飯を取り、食いしん坊な私がむくむく顔を出し始めたのが17:30。
少し元気が出始めた証拠だ。
元気がないと、ホットケーキを焼こうなんて思わないから。

元気がないと、何かをしたいなんて思わない。
〇〇がしたい、そんなキラッと希望に満ちた思いを横目に眺めつつ、意味もなくホットケーキの気泡をヘラの端で潰す。
スンと横目で見つつ、やっぱり私はこの秋、ホットケーキをたくさん焼きたいと思う。

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そりゃこれからだって、頻繁に落ち込むだろう。ギャーッと怒って、帰宅後毛先のへたった絨毯に私もへたりこむ未来が容易に想像できる。想像できるし、同じ仕事を来週からまたするんだ、確実にそうなる。だけれども、きっと私はその数日後にきっとホットケーキを焼ける。そうやって何度でも、しゅんと萎んだ心をふっくらふかふかにできるはず。
いや、そうじゃないと困る。

これまた季節外れのアッツアツのホットコーヒーと共に、特大サイズのホットケーキをむしゃむしゃ頬張っていたら、あっという間に土曜日19:00を迎えようとしていた。今日はこれから40℃の湯船を張って、30分浸かろう。そのままpodcastを聞いて、時間を気にせずゆっくり眠ろう。

明日は何をしようか。
秋にしたいことを思い浮かべていたら、身近な明日にしたいことを考え始めていた。