私たちは付き合った。サークルで出会って、距離が縮んだのは、私がお酒を飲んで彼氏でもなく一番最初に君に電話したからだった。
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大学1年の私は、ほろ酔い1缶飲んだだけで顔が赤くなってて、呂律も回ってなかった。夏の夜の涼しい時間。私は3つ上の彼氏より先に君に電話した。君は私の電話で30分も時間かけてわざわざ遊びに来てくれてたね。酔ってる私に彼女持ちの君は、温かいその手で優しく撫でてくれた。私は彼氏ではなく君に撫でてもらえることが嬉しいと思ってしまった。一個上の君は私よりも大人っぽくて、私が酔ったら優しくかまってくれる。でも、君は、お酒が入ってなかったらやってくれなかっただろう。だから、この時間が大切で、お酒のせいか街頭すらも輝いて見えた。
君の指が私の口に当たる。私は甘噛みをした。君はそんな私を見てた。夏の夜の涼しい時間。私は君に恋した。それから何度かお酒を飲んだら君に電話をするのが習慣になった。「優しく包まれてる」が強く感じた。「シラフの時に映画に誘う。友達として」
私は君に誘った。「講義のやつで見ないといけない映画があって一緒に行ってくれない?」君は2人っきりなのか、他の友達を誘うのか聞いたけど、私は2人っきりが良いとはっきりとはいえなかった。「どっちでも良いけど大人数で行って、好きじゃない映画だからって言われたら嫌だなぁ」と言った私の意見に、君は2人で映画に行ってくれることにしてくれた。夏の夜の涼しい時間。最後の上映時間で貸切状態の映画館。私たちは、いつものように座席下で手を握った。
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私の彼氏は酔ったら私に電話してくる。
「酔っちゃったぁ、もうだめだぁ、だいすきだよぉ」私は、そっけなかった。甘えられるのが苦手だと気づいた夏の夜の涼しい時間。「お水飲んだら?大丈夫?飲みすぎないでね」最低な私。ちゃんと関係を、距離を考えなきゃいけない。苦しい。
「今の彼女と別れるから、付き合って欲しい」そう君に言われた夏の夜涼しい時間。お酒はまだ入っていない。私もケジメをつけなきゃいけない。彼氏に全て打ち明けた。傷つけてしまった。苦しかった。好きな矢印がお酒によって違う方向に向いていった。
私たちは無事に付き合った。お互いに精算した後に、付き合った。私たちはお互いにすごく好きな関係だった。毎日がお酒を飲んでるかのようにクラクラするぐらい甘く淡い時間を過ごした。クリスマスの夜にはシャンパンを。私の誕生日には、ウィスキーを。カップルメンバーでの飲み会では、初恋の味を。すごく幸せな時間だった。
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いつの日か、私はまた1人でカシスオレンジを作って飲んでいる。気づけば君の帰りを待っている。今度は私がさよならされる番だと気づいた春の夜の肌寒い時間。大学生の恋愛なんてこんなものだ。と心に言い聞かせる。一瞬で縮まり、泡のように消えていくものだと。私はお酒を飲み干し彼氏に電話をかける。
「お水飲んだら?大丈夫?飲みすぎないでね。ごめん、もう寝るね。おやすみ」