男女の飲み会において、特にその異性が本当に大切で大好きな場合において、絶対に守りたい、守らなければいけないと思っていることがある。
それは、どれだけ酔っていても異性として意識させてはいけない、ということだ。
隙を見せたり、くっついてみたり、手をつないでみたり、とろんとした顔で見つめてみたり、これは完全アウト。男女の友情が崩れる音がする。理性崩壊の終わりの音だ。

1年前の冬、私が大学2年生のときの経験談。異性だけど大学で1番仲のいい友達と飲みに行ったときの話だ。
その友達とは同じ学科同じイベント運営団体の仲間で、その日もその集まりの帰りだった。
団体には1年生から所属していてすぐに仲良くなった。1番仲良くなった理由は恋バナ。特に、下ネタ。
前世は双子だったとお互いに言い合うくらい、仕事に対する考え方や恋愛に関する価値観、性癖まで合致していて、飲みに行くと必ず最後は下ネタに行き着く。「恋人がいなかったらどうなってたのかな」と冗談めかして何度言ったことか。大学の友達でその話ができる人がいないのも理由だったのかもしれないが……。

◎          ◎

その日も委員会や共通の友人の話、恋人の惚気をひとしきり話してお決まりのゴールにたどり着いたが、メインは私の相談だった。
先日、私の彼氏が成り行きで男女の泊まりをすることになってしまった。付き合ってすぐ、「カラオケのオールも旅行も行ってきていいけど、エアビー飲みはやめて」と言っていたのに。それがばれた経緯が馬鹿らしく、共通の友達のインスタグラムのライブの場所からだった。
彼氏に速攻連絡。
「どうゆうこと?」
「ごめん」
集合が遅くなり開始時間が遅くなったため泊まることになったらしいが、ばれたきっかけの友達にも謝らせてしまうという、彼氏が悪いのに私も罪悪感をえる出来事だった。
「その後彼氏と話し合ったけど、『必ず連絡するっていうのが、約束できない』なんて言われて『なら、別れる』と勢いで言っちゃったの。けど、信じられない。私悪くないよね?」
「それは彼氏が悪いわ。けど、『別れる』って勢いで言っちゃう悪い癖また出てるよ」
「だよね、またやっちゃった」
1、2杯飲んで2軒目。
そこでもお互いの相談と他ではできない話をして、いい感じのおでん屋でいい感じにほろ酔いになった帰り際、私がポロッと「私、今行けるテンションだわ」と漏らした。
友達が恋人にゾッコンなのをわかっていたから。

◎          ◎

「何言ってんの。ちゃんと話し合いなよ」
案の定、やんわりと拒絶。
わかっていたのに、しまった、と思った。重大な罪を犯してしまった、とも思った。だけど、友達が乗ってこないのをわかっていたから、ちょっと道を踏み外してみたかったのも本音である。
自分の彼に仕返しをしたかった。
共通の友人が多く、絶対にばれてはいけないから隠し通すのに、彼氏に、私だってずっとあなたのそばにいるわけじゃないのよ、とわかってほしかった。コイツの彼女みたいに大切にされたかった。

現在もその時の彼とお付き合いをしているし、その友達とも仲がいい。
間違いなくあのときの私は弱っていた。だけど、もう絶対そんな間違いはしない。もしかしたら、1番仲のいい友達をなくしていたかもしれない。どんなタイミングでも、1度起こってしまえば、元の純粋な友達には戻ることはできないと思う。
間違いかけた私は、友達の優しさに甘えている。
私はずっとその友達とは仲良くしたい。
だから、もう、間違えない。
だから、女として意識させたらだめだ。大切だと思う友達の前では絶対に。