コロナが始まり、私は消費者になる時間が減った。正確に言うと、コロナが始まり消費者になる時間の一部が減ったことをきっかけに、意識的に消費者になる時間を減らすようにした。

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今までは、友達と遊ぶと言えばショッピングモール。お茶をして、ウインドウショッピングをするのが定番コースだった。「買うつもりはなかったけど、見てたらほしくなっちゃった」、「せっかく駅前まで来たんだし、何か買いたいな~」と理由を見つけて、購入することも多々あった。

いつも、違う服を着て、それに合わせたバッグや靴を身に着けている友達。そんな姿を見ては、「私も夏だからサンダルが欲しい」、「新しい服を買ったから、それに合わせるバッグが欲しい」と回転ずしのように、次から次へと物欲が流れてきていた。

しかし、コロナの感染が広まりZOOMでの集まりがメインになった。必然的にショッピングモールに行く機会が激減した。そのことによって、目的地に着くまでに視界に入るお店のディスプレイを見る機会がめっきりなくなった。友達の服装を見る回数もコロナ禍前と比べると減少していた。

すると、私の物欲はみるみると減っていった。理由は簡単だった。人は見たことあるもの、知っているものしか欲しくならない。もちろん、ショッピングモールに行かなくなったからとって情報が完全に断たれるわけではない。オンラインショップやSNSで商品を見ることはできる。しかし、ショッピングモールと比較すると情報量がかなり絞られている。

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オンラインショップやSNSは自分の興味関心があるショップだけをみることができる。一方、ショッピングモールは自分の興味関心がそこまでないブランドも無意識のうちに視界に入っている。ショッピングモールから離れることで、私の見たことあるもの、知っているものは激減した。結果として、物欲が湧かなくなったのだ。

煩わしいほどに心の中でわめいていた物欲がおとなしくなった時、私は「なんて快適なんだ~!」と感激した。物欲が収まり買い物をしなくなってしばらくたった時、「全然、困らない。あるものだけで不自由なく生活できる」と気づいた。そこから私は、少しずつ消費者としての行動を減らしてみた。

まずは、InstagramとYouTubeから始めた。商品紹介のコンテンツを好んでいたが、思い切って見るのをやめてみた。正直な感想は、「今まで使っていた視聴時間の代わりに、何をしたらいいのかわからない」というもの。商品紹介のコンテンツが見れないことのストレスよりも、スキマ時間を持て余すストレスのほうが大きかった。

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どうしたものかと悩んだ私は、消費者としての時間をほかのもので埋めることにした。「消費者の対義語は生産者だ!」と思った私は、何か生産してみようと思った。そこで始めたのが、クラウドソーシングの仕事だった。

その中でも、私が好んで参加していたのは、心理学実験や学術調査など大学が募集をかけている案件だった。私自身が心理学を専攻する大学生のため、他の人が実施している調査に参加することは勉強になり有意義な時間を過ごせた。特に、心理学系の調査では倫理的配慮や質問文の工夫などが自分の研究にも役立ちそうだと感じた。

クラウドソーシングを始めたのはお金を使わないことが目的だったので、学術調査について学べることが多いとは始める前は思ってもいなかった。さらに、お金を稼ぐことが目的ではなかったため、口座を確認した時に驚いた。1か月後、私の口座を確認すると約1万円が振り込まれていたのだ。クラウドソーシングに時間を使うことで、お金が減らないどころか、お金がたまっていくのだった。私は、この時間の使い方気に入った。この経験をきっかけに、私は消費者でいる時間を、最小限にするように心がけるようになった。

コロナ禍の終わりと共に、以前のように友達とショッピングモールに行くことが日常に戻るだろう。そんな時に、今回の経験を思い出し、自分にとって本当に必要なものなのか、一度立ち止まって考えてみようと思う。