7月23日、自宅に桃が届いた。
段ボールを開けると、乳白色の大ぶりの桃や太陽みたいな橙色、かわいいピンク色の小ぶりの桃が梱包材に包まれ、ぎゅっと詰められていた。わぁ、と思わず声が漏れる。
桃の甘い香りがほわほわと漂う箱の中をのぞくと「もぴちゃんへ」と、送り主でありこの桃を栽培している、Yさんからの手紙も一緒に添えられていた。

私が購入した桃の送り主であるYさんとの出会いは約3年前に遡る。
当時、仕事もプライベートも何もかも八方塞がりになった私はこの日常を一瞬でも抜け出したくて、京都へ1人旅に出た。訪れたい寺社仏閣とやりたいことを3つほど挙げ、それ以外はノープラン。そのやりたいことの1つに梅シロップ作りがあった。
子供の頃から好物を聞かれたら即答で「梅!」と答えるくらい、すっぱい梅はもちろん、しょっぱい梅や甘い梅も大好きな私。

京都の蝶矢という梅体験専門店では自分で梅や砂糖を選び、梅シロップや梅酒が作れるという。存在を知った時からずっと行きたいと思っていた。京都滞在中の空き状況を調べると、当時は定員4名のためどの時間帯も既にほぼ埋まっていたけど、偶然空いていた夕方の時間帯を見つけて運良く予約できた。

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梅酒作りは旅の2日目。
直前に寄った雑貨店が素敵過ぎて、ギリギリの到着になってしまった。店内に入り、乱れた息を整えていると隣の女性が話しかけてくれた。
「お1人ですか?私も1人だったから嬉しいわぁ」
1人で慣れない街にいたから話しかけてもらったことが嬉しくて。私は彼女と梅のヘタを取りながら、1人旅で来たことや梅が好きでずっとここに来てみたかったことなどをいつの間にか話していた。まだ名前も聞いていないというのに。
だけど彼女は笑って相槌を打ってくれ、普段の仕事や参加した経緯などを話してくれた。

約1時間後、あっという間に作業が終了した。
梅や砂糖をじっくり吟味し、会話をしながらだったから体感はまだ30分なのに時間の速さに驚いた。それくらいYさんがとても話しやすかったから楽しくてあっという間だった。
「ありがとうございました」
ほくほくした気持ちで共に店を出た。もう会えることは無いのだろうなぁと、楽しさと寂しさが半々の気持ちで楽しかったねと雑談をしながら歩く私たち。別れ際に差し掛かった時Yさんがこう言った。
「ねぇ、よかったら連絡先交換せぇへん?」
「わ、嬉しいです!私ももっと話したいなぁって思ってて!」
「よかった!もっともぴちゃんと話したいと思ってん」
Yさんの笑顔と地元ではなかなか聞けない関西弁に、私もつられて顔がほころんだ。

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それから旅を終え、帰宅してからもYさんとLINEをしたり、時々電話をしたり。Yさんと電話する予定が立つと、それが私の仕事を頑張る原動力の1つになった。
通話を続けると、どんどん新しい彼女を知っていく。彼女は今別の仕事をしているけど、家族がしている桃栽培を自分もするために仕事と桃栽培を両立していることや、目標に向けて努力していること。
とても行動力があって、毎回話をするたび滞在場所が変わっていたり楽しい話をしてくれたり、私より4つ年上の彼女の会話での言葉選びや自分のライフステージとの向き合い方にとても私は刺激を受けた。
京都での偶然の出会いから3年経った今でもYさんとのやり取りは続いている。去年はまた京都へ、今度は4泊5日の1人旅にて彼女と会う約束をした。
「もぴちゃんも結構行動力ある方だよ!じゃなきゃ1人で来ないって!」と、笑ったYさんは京都の友達をたくさん紹介してくれ、滞在中10人ほど彼女の友達と食事をしたりお酒を飲んだりした。Yさんのおかげでまた新しい出会いに恵まれた5日間だった。

京都での出会いもそうだけど、この「かがみよかがみ」でも素敵な出会いに恵まれた。
私は今、同時期にこのサイトを卒業した同い年のかがみすとさんとメールのやり取りをしている。1、2スクロールしただけじゃ読み切れないくらいお互いに話したいことも聞きたいこともありすぎて、マイペースに嬉しいやり取りが続いている。

ちょうど最近、仕事やプライベートでの我慢が限界に達して体調を崩してしまった。返事が遅れてしまった私の事情を話すと返信が来た。開くと、私の事情を心配してくれた文章の中に彼女の経験も交えた温かい言葉がたくさんメールにちりばめられていて、泣きたくなるほど嬉しかった。読みながら涙がこぼれた。「頑張れ、なんて気安く言えないけど、力になりたい」と言ってくれた彼女の優しさに心がほっ、と温かくなった。
おかげで少しずつ体調も回復し、上司たちと対峙しながらもなんとか働けている。
いつか、今やり取りをしている彼女とも直接会って話をしてみたい。

2人とも自分の姉妹が大好きなこと、夢を持っていること、考えすぎてしまうこと。

夢に向かって目標を達成したこと、細やかな気配りが嬉しかったこと、会話の引き出しがたくさんあること。

共通点も彼女を尊敬しているところもたくさんある。だからきっと直接会ったら口がカラカラになるまで話が止まらないだろうなぁ。こんな大切な友達、なかなか見つからない。
これからも彼女の言葉に励まされて背中を押される私は、今日も彼女からもらうメールにじっくりと向き合い、時間をかけて大切に返事を送ろうと思う。

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この4年間に私は大切な出会いをたくさん経験した。
まさか、京都で偶然出会えた彼女が頑張って育てた桃を購入し、舌鼓を打てる日が来るなんて。

離れた場所に住む同い年の彼女とこのサイトで出会い、こんなに真剣な話から他愛ない話までできるなんて。
人生って何があるか分からない。もしかしたら明日、そんな大事な出会いが私を待っているかもしれない。うっかり見逃してしまわぬよう、私はこれからも人との繋がりを大切にしたい。

さて、私の妹は桃が大好物だから半分こして美味しくいただこう。
この桃を購入した経緯からゆっくりと話を聞いてもらいながら妹と美味しく、楽しく、届いた桃に舌鼓を打てたらいいなと思う。