「女の子デー」
この言葉を使い始めたのはいつからだろう。中高生の頃だと思うけれど、 「生理」のことを「生理」と言わずに、別の言葉で表現するようになった。

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中高生の頃、私の周りでは「女の子デー」という言葉がよく使われていて、 女子だけではなく、男子もその言葉の意味を察していたようだった。 

元気そうな女子生徒がプールの授業を見学していると、 「あいつ“女の子デー”ってやつじゃね?」と言う男子生徒の声が聞こえてきた。

私は、プールの授業が嫌いだったから、 “女の子デー”でも何でもいいから、プールの授業が休めれば嬉しかった。
中学生の頃は、PMSもほとんどなく、生理痛も少しだけで、 生理周期など気にもしていなかった。

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あの頃は、中学生でスマホをもっている子は少なく、生理が来る日を予想するなんてことができずに、いつも少しだけ下着を汚してしまうのが定番だった。 

高校生からスマホを持ち始め、「とりあえず」という気持ちでインストールした、 うさぎが目印の、生理周期予測アプリ。
大学生の頃から、何も考えられなくなるような、強い生理痛を経験するようになり、「そういうものだ」と思い続け、 横になっても何をしても解決しないからと、ただトイレに座って痛みが和らぐまで待っていた。 

「ねね、ナプキン持ってる…?」という友人からの声かけに、 バッグからササっと巾着を取り出し、巾着ごと友人に手渡した経験は何回あるだろう。
誰かが教えてくれたわけではないけれど、 生理用品は人に見られても大丈夫なように、かわいい巾着やポーチに入れるのが一つの常識らしい。 

子宮を持つ人間が、月に一回生理を経験することは、誰しも分かっていることなのに、 ドラッグストアで生理用品を購入するときには無言で紙袋か、グレー色のビニール袋に入れてくれる。 

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生理休暇がある日本の企業もあるけれど、 取得率は非常に低いとニュースで見た。
私も「生理なので休みます」というのは職場で聞いたことがない。
当たり前のことなのに、「生理」について大々的に話したり、「生理中」であることが分かるような行動をとってはいけないのは、なぜだろう。 

最近になって、「低用量ピル」のCMもテレビで流れるようになったから、時代は少しずつ変わりつつある気はする。
「女の子デー」じゃなくて、「生理」と言っていいのに。
そんな疑問を大学生の頃から持っていたけれど、「妊娠しているのかも」と不安になった経験をして、「生理」が何かをちゃんと知った。

4年前の秋、私は初めて妊娠検査薬を買った。
3年前の春、私は低用量ピルを飲み始めた。
1年前の夏、私は低用量ピルの服用を辞めた。
4年前の秋、スマホのアプリで表示される予定日を3日過ぎても、5日過ぎても、
生理が来ない時があった。 

インターネットで「生理 来そうで来ない」「生理来ない 妊娠」と調べまくり、 何とか自分を落ち着け、トイレに行くたびに、血がついていないナプキンを見つめ、 「生理来て!」と念じていた。 

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妊娠検査薬を買い、「もし明日来なかったら検査しよう」と覚悟を決めた夜、お風呂場で指についた血を見つめて、「あぁ良かった」と安心した。
世の中の男性には分からないことだろうけれど、 生理が来る瞬間はコントロールできない。 

「よし今ならいいよ!」と身構えたときに、血が出てくれるわけではない。
生理予定日が近づいて、下着を汚さないために、決して安くはない生理用品を使い、トイレに行くたびに「まだ来ていなかった」と思うことが嫌で、 今では、生理予定日が近づくと、お風呂場で自分の膣に指を一本だけ突っ込んでいる。 

そして、指に血がつくかどうかを確認し、血がついていると、「あっ良かった」と毎回思って、タンポンを突っ込む。毎月その繰り返し。
今月も私は妊娠していないと。
妊娠したい人々はこの血を見て、落胆するのだろう、「今月もダメだった」と。 

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子どもはかわいい。
何なら私は教員免許も持っている。
セックスも好き。
だけれど、今子供を産んで、育てたいか、と聞かれると、ちょっと違う気がする。私はもっと自由に生きていたい。セックスもしたいし、愛したいし、仕事も頑張りたいし、美しくいたい。

そんなに妊娠したくないのなら、セックスしなければいい、という人もいるだろう。
子宮を持つ人間だって、セックスを楽しみたいじゃないか。
そのためには、もっと堂々と、生理について、セックスについて語れるような世の中が必要だし、避妊の方法を正しく伝える必要があるし、日本では認可されていない避妊方法(避妊パッチなど)も日本社会全体で検討してほしい。

どんな避妊方法も決して100%ではないことを分かっていながら、 私は、今日も誰かを愛している。