2020年冬、ちょうどコロナ幕開けの頃。
私自身、東京からこれまで訪れたこともない地方都市に単身Iターン転職をしたタイミングだったし、それにより遠距離恋愛が始まったりなど、環境を変えたことで私生活がガラッと変わった時期でもあった。

東京にいる同世代の友人たちは、働き方がリモートワークになるも、バリバリ東京でそれまでと同じ仕事を続けていたし、逆に私は一人で地方に行ったことで、地方特有の転職先の環境に慣れるのに必死だった、そんな時期だった。

◎          ◎

もし、あのタイミングでコロナが来ていなければ、多分私は地方転職はしていなかった。コロナによって緊急で仕事が生まれ、そこにたまたま自分とご縁があったという、地方とは、今思えば本当に引き寄せのような出会いだった。

正直、地方転職の前までは、当時付き合ってた彼との結婚までも個人的には視野に入れていた。せっかく親しくなったのに、ここで彼と離れたくないという気持ちと、でも本当に彼軸で自分の仕事を選択していいのかという自分の中での迷いもあった。
ただ、やはり先の見えない人生、自分が最大限輝ける選択をした方がいいという想いや、親元を離れ自立した生活を送ってみたいという願望、前職は自分で選び希望がすべて叶った形で就業するも持続的な幸せを感じられなかった経験から自己選択を見直すようになり、今度は元々信頼してた転職先の人たちの誘いに従ってみようということで、そのまま地方転職の話にのっかった。

◎          ◎

正直、この転職は、努力によって環境を「勝ち取った」、一から自己選択し自分の人生を「切り拓いた」というようなこれまでの感覚とは違ったものの、はじめて、ありのままの自分で導かれるように誘いに素直にのっかるという事をした。これまで未来志向で明確な理想を持ち、その実現のために長らく努力してきた私からすると、特に近未来にコレといった理想もなく、それが故今のありのままの自分で面接の勝負に臨むという、いままでにない体験をしたのもこの時だった。

◎          ◎

結果、地方に来て……「純粋に良かったな」と今思っている。地方に来て新たな価値観や新たな生き方を体験していると、シンプルに自分がこの先本当にやりたいことを見つめ直す機会が多い。東京で毎日単一的業務を繰り返し、外発的プレッシャーのなか忙しなく過ごしていた頃よりも、仕事を通して社会の手触り感が持て、自分や社会の興味の根源に向き合える機会が多い。コロナがあり地方転職するも、最初はなかなか他地域へ行けなかったが、最近は色々な地域を飛び回り、いろいろな景色や文化、課題や展望に触れる機会が増え、視野が広がり、より仕事や人生で近未来・将来やりたいことが浮かんできた。やりたいと思えることがあったり、そう思わせてくれる素敵な同僚に囲まれていることは、幸せなことだと思う。

コロナでアラサーで縁もゆかりも無い地方に突如来ることになったが、今もこれからも自分らしい満足度の高い人生を生きるには、図らずも良い巡り合わせだったと思う。昔の彼とは疎遠になったが、私はこの機会に感謝している。